【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン
「どこいくの?」
声をかけられた緊那羅が振り向くとむすっとした顔の慧喜が立っていた
「あ…えと…買い物…がてら京助と悠助を探しにいこうか…なーなんて思ってたんだっちゃ;」
あからさまに不機嫌な慧喜に緊那羅が苦笑いで答える
「悠助…やっぱり義兄様のあとついていったんだ…」
「…慧喜?」
きゅっと唇を噛んだ慧喜が俯く
「最近…悠助俺を見てくれない…ずっと義兄様義兄様…もう俺のこと嫌いになったのかな…」
「慧喜…」
俯き小さくいった慧喜にかける言葉が見つからないのか緊那羅はただ慧喜の名前を口にするだけでそれ以上はなにも話せなかった
「…俺も行く」
しばらく沈黙が続いた後慧喜がおもむろに足を進めてサンダルを履いた
「あ、ちょ…待つっちゃ慧喜!;」
大またで歩き出した慧喜の後ろを緊那羅があわてて追いかけた
「ま…まっ…てぇえん;」
ゼーゼーとヒューヒューを言葉の間に挟んだ南が坂田のシャツを掴んだ
「伸びるわ阿呆!!;」
びろーんと約1メートルは伸ばされたシャツを引っ張って坂田が怒鳴る
「お前小学一年以下の体力ってアカンとおもうぞ俺;」
坂田が南に声をかけるが南はヒューヒューゼーゼー息を発するだけで精一杯らしくその場にヘタリと座り込んだ
「…しゃぁねぇなぁ…; お前ここにいろや;」
坂田がため息をついて南に言う
「…や…ぃじょぶ…;」
「いやだいじょばねぇだろ; 話し方が制多迦弁になっちょるし;」
手を振って大丈夫と主張する南に坂田が突っ込んだ
「わ…ったしをおいていかな…ゲホッゲホッ!!;」
南が激しくむせる
「アカンだろ; どうせ一本道だし帰りに拾ってやるから! OK? いい子だから動くなよ?」
咳き込む南に頭をなでた坂田が結構遠くにいっちゃった悠助を追いかけて駆け出した
「いっやぁ~…ん;」
南がゼーゼー言いながら遠のく坂田の背中に手を伸ばした
作品名:【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン 作家名:島原あゆむ