天然優等生vsツンデレ優等生
「先生」
「お、り…っ!えと…桜井、きたか」
「…?はい」
危ない危ない。危うく下の名前で呼ぶところだった。
こいつは生意気でワースト生徒なため、多大なる憎しみも込めて陰では下の名前で呼び捨ててやってることがバレるとこだった。
「あの、誰だったんですか?」
「ん?」
「いや、生徒。俺それだけわかればいいですから」
「…セイト?」
「?」
「?」
セイト?何の話をしているんだ奴は。いったいいつの話をしている。
俺に呼び出されてここに来たのではないのか?
「だから俺を呼び出した生徒ですよ!先生が追い払ったんでしょ」
「なぬぅあっ!?」
「は!?」
なに――――――っっ!?俺の手紙はそんなにも幼稚だったと言いたいのか!
さすが優等生。冷静に返してくるな。だが俺は屈しないぞ。例え皮を何重にも被った仮面のキャラであろうと生まれ持った有能な話術で俺の授業に対する姿勢を叩き直してやる!
「あ、ごめん。桜井を呼び出したのは、俺だ」
「・・・・・・はい?」
「あ、ごめん。桜井を呼び出したのは、俺だ」
「・・・・・・・・・」
なぜか桜井凛はしばらくの間動かなくなった。
何故だ?はっ…、なるほど。俺が屋上に呼び出して説教をかますほど度胸の座った教師には見えなかったということか。たしか俺はなよなよっとして棘も頼りがいも無さそうな爽やか教師を演じている。そんな教師の思いきった行動に驚く気持ちはわからなくもない。
だが俺はただ大口叩いて無駄に声を張り上げ説教を垂れるカロリー消費だけ激しいのではないかと思える効率の悪い方法を取るバカ教師ではない。
飴とムチ…ではなく飴だけで覚えの悪い生徒を見事に更生させてみせようではないか。
有能な教師の俺だからこそできることだ。
「桜井、俺が嫌いか」
「!?……いえ、特に、は」
くっくっく、今明らかに動揺したぞ。学年首位だかなんだか知らんが、結局は16歳。まだまだ身体的にも精神的にも未熟な子供だな。
「そう、か。お前、俺の授業のときだけ寝てるだろ?いつもそうなんじゃないかと他の先生に聞いてみたが、真面目に受けていると皆口を揃えて言ったんだ。だから、俺にだけ唯一どうしても気に入らないところがあって真面目に授業を受けてくれないんじゃないかと思って。なら、」
「先生、俺テストは古文も他教科と変わりなく点数取っていると思います」
「?そうだな」
「なら、いいじゃないですか」
…何を言っているんだコイツは。何故今テストの話になる。俺は確実に授業の話をしている。
話を聞いていなかったのか?
作品名:天然優等生vsツンデレ優等生 作家名:ハルユキ