天然優等生vsツンデレ優等生
「…………なんで?」
「!?」
驚いた表情をして、桜井凛はしばし俯いた。
何をそんなに驚いているんだ。
…思い返してみれば、俺は教師になってまだ1年もたっていない。担当を持ったことが無い為、生徒と1対1で話す機会は思えば無かったかもしれない。
高校1年生というのはそもそもどこまで知識や知能が発達してるのだろうか?
大人である俺の言葉や思考をどこまで理解できる?もしかしたら出来ない境界もあるのではないか?俺は今高校生に戻ることは勿論無理だし、単純に思い出を振り返ることはできても、その時の自分が何を考え、疑問を持ち、大人の言葉をどこまで理解できていたかまでは正直思い出せない。
………。
俺は、少し後ろへ退いて桜井凛の話を聞く姿勢を持ってみようかと、やはり大人な結論を導き出した。
「……あの、桜井?俺はな、お前に嫌われたくないんだよ」
「……」
「あ、いや、もう嫌われているのかもしれないけど。だったらその部分を直して、好きになってとまでは言わないから、とりあえず俺の授業も真面目に受けてもらえるような仲にしたいんだよ」
「………アンタさ」
「…ん」
『アンタ』……だと?殴りたいよこのガキ。殴らないけど。
「そんなに皆に好かれたい?嫌われるのが怖いの?良い人ぶっちゃってさ」
「?そんなつもりは」
「そんなつもりにしか見えないよ。とりあえず生徒にアンタとか言われてんじゃないよ」
「え、」
いや、言ったのおまえだよ?
というか、おまえ以外の生徒にアンタ呼ばわりされたことなんてねーよ。
「学校は授業受けて勉強しに来るところだろう。寝てんじゃねえよって後頭部ぶん殴るくらいの威勢の良さ見せろよバカ!何授業態度悪い生徒目の前にへこへこしてんだよバカ」
「え……っ」
なんだそれ。反抗心むき出しで来たかと思えばこの俺に説教?
つーか、バカって。…………2回も言ってるし。
「……ふっ…くくく」
「なななんでだ!」
「え」
「なんで笑ってんだバカにしてんのかバカ!」
「あ、ごめん。いや……ふふ」
「〜〜〜〜っ―――!!」
なんだなんだバカバカ言いやがって。
そんな連呼してるおまえが寧ろバカっぽいんだが。
そうして目の前の想像以上に幼稚すぎる生徒に腹を抱えて笑っていると、いつの間にか桜井凛は屋上から消えていた。
頭超いいのに。
俺に反抗心むき出してるつもりなんだろうが、言うことは全部正しくてただの優等生じゃねぇか。
なんか、心配すぎる生徒だな。
俺がみっちり教育して社会に送り込んでやんねぇと。
作品名:天然優等生vsツンデレ優等生 作家名:ハルユキ