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天然優等生vsツンデレ優等生

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Episode2




「桜井はいつもパンなのか」
「パンっつーか…コンビニ、かな」

何故か俺は古文教師の渡里敬と昼休みをともにしている。
さあ、それは何故か。


4時限が終わるチャイムと同時に、空腹で死にそうな俺はすぐさま、俺だけの空間である屋上にダッシュした。

何故こんなにも快適な屋上が俺独占の空間と成り得るかというと、屋上は現在立入禁止、故に管理さえ滞った廃墟と化しているからである。
……屋外なのに廃墟はおかしいのか?まあ、いいか。

だのに!

何故現れた渡里敬!
そういえば…

大いに印象的であった初会話を交わした場所に屋上を指定したのは何故だ?
立入禁止場所を生徒との面談に指定する教師これいかに…だ。

「ああ。いや、内緒の話をするのに悩んだ結果、やっぱり屋上かな、と」
「?」
「定番だよね。屋上」
「………」

この天然ボケボケ教師と真正面に対話を試みるのは早いうちから諦めておいたほうがいい。うん。我が身のためだ。


「……先生は弁当なんだな」
「うん」
「…毎日?」
「そうだよ」
「へぇ〜」
「何?」
「……別に」


彼女、かな。あ、結婚してんのか?
だよな。32歳だもんな。
はっ。幸せオーラでまくってるもんなこの先生。
なんだ?まさかこのボケボケも幸せボケとかいうのか?
はっ。新婚か?まぁ……知らんけど。
知らんけど……な。

「あ」

卵焼き……。
いいな、卵焼き。好きなんだよな、特に弁当に入った冷たくてパサパサしたやつ。
なんか弁当って感じで。

「? 何?」
「え、いや」
「卵焼き、好きなの?」

「は、なんだよ見てねーよ」
うわー、おもいっきり見てたのバレたーヤバいー。

「食べる?卵焼き」
「食べねーよ!」
「いいからはい、」
「んうぐっ!?」

……不可抗力だ。きわめて強制的に口に卵焼きを投げ込まれた。

「〜〜〜………っ」

「どう?」

どう?…って……

「………タマゴヤキ…ってかんじ」
「ぷっ、ははっ、そうか。そうだね。卵焼きだね!」
「―っ、笑うな!」
「はいはい」


なんだか、なぁ……
なんだか、瞬く間に仲良くなっちゃった?和解しちゃった?生徒と教師みたいじゃん、俺ら。
そんなきっかけはどこを探そうとも見つからないだろうに。
そしてこんな場面をもし村木に見られでもしたら、そろそろ俺は終わりだ。
そして村木も笑い過ぎて死ぬのではないだろうか?

昼休みの時間は着々と進み、渡里はそろそろ1時間たとうとしている今さえも俺の隣を離れない。俺の隣のクラスに愉快な生徒がいるとの情報を公開してくれている。いや何の情報だ。何故だ。
因みに俺からヤツの隣を退かないのは、決して少しずつ先生に心を開きつつあり好意を深めたからではない。意地とプライドのみである。


「あ、時間だ」
渡里は時計を確かめると、弁当を片付け始めた。

「桜井も遅刻しないように戻れよ」


……あ、今コイツが教師なの、思い出した。
あまりに隣の教師がこの1時間教師らしい話を一切していなかったからうっかり忘れていた。

「当たり前だろ。誰だと思ってんだよ」

俺はお前の授業以外では前後左右どこから見ようと優等生なんだよ。
知らないのは唯一お前だけだ、渡里敬。

「ははは、そうだよね。じゃあまたね」

「………」

だから、なぜ笑う。