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天然優等生vsツンデレ優等生

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修平への手土産に笑い話を…どころではなかった。
どうやら事態はもう少し深刻なものらしい。

「ぶわっはっはっはっはっはっはっはっ」
「………」
やっぱり修平の笑い上戸は天性のものがあるなあ。

「ぐふっ、クックッ…で?」
「何」
「お前はなんて答えたんだよ」
「…努力します」
「ぶはぁっ」

奴、渡里敬が放課後に屋上まで呼び出した要件は以下の通りであった。

「桜井、俺が嫌いか」
「!?……いえ、特に、は」
いっそうYESと答えてやろうかとも思ったが、面倒になると思い無難に返した。
「そう、か。お前、俺の授業のときだけ寝てるだろ?いつもそうなんじゃないかと他の先生に聞いてみたが、真面目に受けていると皆口を揃えて言ったんだ。だから、俺にだけ唯一どうしても気に入らないところがあって真面目に授業を受けてくれないんじゃないかと思って。なら、」
「先生、俺テストは古文も他教科と変わりなく点数取っていると思います」
「?そうだな」
「なら、いいじゃないですか」
「…………なんで?」
「!?」
ばかちん!!バカチ――――――ン!!!!と俺は思わず叫びたくなった。
そんなキャラじゃないから間違っても言わないし表情にも出さない。……出しそうだったけど。渡里ってこんなに天然だったのか?察しも悪いし、よく優等生先生のレッテルをものにしたな渡里敬!

「……あの、桜井?俺はな、お前に嫌われたくないんだよ」
「……」
「あ、いや、もう嫌われているのかもしれないけど。だったらその部分を直して、好きになってとまでは言わないから、とりあえず俺の授業も真面目に受けてもらえるような仲にしたいんだよ」
なんだよその低姿勢。教師が生徒に対してそんなに腰低くてどうすんだよ。そんなんじゃ他の生徒に舐められんぞ。そんなんじゃ立派な教師になんていつまでたっても…
「………アンタさ」
「…うん」
「そんなに皆に好かれたい?嫌われるのが怖いの?良い人ぶっちゃってさ」
「?そんなつもりは」
「そんなつもりにしか見えないよ。とりあえず生徒にアンタとか言われてんじゃないよ」
「え、」
「学校は授業受けて勉強しに来るところだろう。寝てんじゃねえよって後頭部ぶん殴るくらいの威勢の良さ見せろよバカ!何授業態度悪い生徒目の前にへこへこしてんだよバカ」
「え……っ」
あら、泣く?泣いちゃうの?
仮にもアンタ32歳男性ですよ。17、8のガキに何か言われただけで泣くんじゃねえよ。
「……ふっ…くくく」


わ……笑っているんですか?
「なななんでだ!」
「え」
「なんで笑ってんだバカにしてんのかバカ!」
「あ、ごめん。いや……ふふ」
「〜〜〜〜っ―――!!」

その後、笑い過ぎた彼は、気の抜けた俺の手を取り「次寝てたら罰則を考えます」と潔く言い放ち握手をした。
なんとなく毛嫌いしていた渡里敬だったが、想像以上に天然で変人であるということを今日にしてわかった。




「あ〜腹いてぇ〜。というか凛、なんで渡里のこと嫌いなんだ」
「え」
「いや、俺違うクラスだったから全然わかんなかったけどさ、ほら、テストの成績だって相変わらずお前優等生だし?」
「………それは」
「それは?」
「〜〜〜るせぇな、いいだろ別になんとなくだよ、なんとなく!バカ」
「なんとなくねぇ…それと、お前その癖、まだ健在なんだな」
「癖?」
「そう、テンパったり動揺すると出るだろう?バカ!って」
「………」
「まあ俺は口下手なお前にしては幼稚で可愛い口癖だと思ってるけど」
「っさい、バカ!」



翌日、俺は古文の授業中、机に突っ伏さず窓の外を眺めていた。
ふと、アイツの顔が気にな…いや、単純馬鹿が少しは喜んでいるだろう顔をいっぺんぐらい拝んでやってもいいかもと、教壇に顔を向けた。
「な…っ」
アイツは予想以上の満面の笑みをこっちに向けてきたから、やっぱり俺は机に突っ伏してしまったのだった。