あたためますか?
「…そういえば今日学校じゃないのか?」
橘は一瞬小首を傾げたあと、今日が平日の昼間だと勘違いしていることに気付き
「何言ってるんですか?今日日曜日ですよっ」
なるほど、という顔をして時計に視線を移すと先ほど見たときからまだ2分程度しかたっていなかった。
何回時計を見ただろうか。どうにも今日は時間が経つのが遅いらしい。
眉間にシワを寄せてレジに立つ皇の姿は接客業にはまるで向いていない。
そんな彼をみかねて、橘は掃き掃除を一時中断し問いかける。
「…そんなに時間たつの遅いですかっ?」
「あぁ、とても遅い」
相手の問いに眉間にシワを作ったままきっぱりと答えた。
小説を書いている時は時間に追われ、とても忙しいので、いわゆる暇疲れという状況にあまり慣れていないのだ。
そんな彼を見て橘は小さな声で呟く。
「……僕といても楽しくないですか…?」
予想外の問いかけに少し不思議に思い、時計から視線を外し橘を見ると
眉を下げて悲しそうに俯く橘がいた。
相手の様子を見ておおよそ自分が悪いことを言ったのだろうと推測したが、理由が見えて来ず、
逆に問いかけた。
「何故そういう結論になるんだ?」
相手の問いかけに答えようと俯いたまま橘はポツポツと話し始める。
「…だって…楽しい時間はすぐに過ぎるっていうし…僕は皇さんと仕事してるとすごく、その…楽しくて…すぐ…時間経っちゃうから…でも…皇さんは違うのかなって…」