赤い傷跡 第二章
予想もしなかった言葉にあたしは思考が停止した。
お婆ちゃんは話を進めていく、
「あんたの母親は人造人間だった…。人間の手によって造られた人間、感情も性格もすべて造られたんだ。」
言葉一つ一つが頭に入ってきてイヤになった、それでもお婆ちゃんは話を続ける。
「それも知らずあたしは真輝の父親…息子との交際を認めてしまった。」
お婆ちゃんはまるでその時の衝撃を思い出したのか、目を伏せて眉が下がっていた。
「あの時、人造人間って知った時は、どれだけショックだったか。あんな造られた人間にうちの息子が遊ばれたと思うと胸が苦しいさ…。」
あたしまで胸が苦しくなってきた、お婆ちゃんの表情は決して怒りを表していなかった、悲しそうだった。
「でもね、あの人はまだ幼い真輝を抱きしめながら必死で謝ったんだ。」
その言葉を聞きあたしは下げていた顔を上げる。
(あの時見た夢と同じだ…)
「あたしはその女を殺そうと思った、だけどその女は森の中に逃げていった。あたしは追いかけて探していたところ…一人になっていた真輝を見つけたんだ。」
お婆ちゃんは少し顔を曇らせる、
「…その日、運悪くウルフがやって来た。あたしはウルフを倒そうとがんばったが全く歯が立たなかった。」
傷がズクズク疼く、まるで血が逆流しているかのようだ。
「そこに真輝の母親が現れた、あの人はウルフの前に立つとこう言ったんだ。」
お婆ちゃんはまた顔を暗くしてあたしを見つめた。
「『私を食べてもいい、ただしこの人達に一切手をだすな』と」
あたしは衝撃的だった、口に手を押さえ次の話を聞いた。
「すると真輝の母親はウルフと一緒に森の奥へ消えていった…、
あたしは今でも後悔しているさ、あのこは、勇敢だった。」
「…この傷はウルフにつけられたの?」
あたしは自分の手首の傷を指差した。
「あぁ、」
短く返事をしてお婆ちゃんは途切れとぎれに言う。
「あたしが…もっと、強かったら…あんたにそんな傷をつけさせなかったし、あんたの母親も守れたかもしれない、」
あたしは雰囲気を変えようと笑いながらいった、
「でもどっちにしろ、お母さん殺そうとしたじゃん、」
「…バカなのはあたしさ、あのこにはちゃんとした、感情があった。
もう少し話し合えば…。」
お婆ちゃんは涙声で言う。
「すまない。全部あたしのせいさ。」