赤い傷跡 第二章
すると遠くから何か流れてくる音がした、いや何かがこちらに泳いでくる音だ。
意識がもうろうとしていて、よく見えなかったが長い桃色の髪が特徴的だった。
(あ…、きれいな鱗。)
下半身は、鱗で覆われていてまるで人魚だ。
その人はあたしを抱えると勢いよく上に泳いでいった。
「ぶはっ、はぁ…ごほっごほっ!!」
あたしはその人に助けられ、改めて顔を見ると。
「…え?瑠色…さん?」
そこに居たのは瑠色さんだった。
さっきの人魚の姿ではなく普通の人間の姿になっていた。
瑠色さんはあたしに振り向くと濡れた髪をかきあげにこりと微笑む。
「もう、大丈夫。」
そしてシモーヌの方を向くと険しい顔をして言う。
「ウルフは、あなたに敵わない。彼らは狂暴よ、とくに満月の日は。」
「…ウルフ?」
あたしが呟くと瑠色さんは答えた。
「この魔女はウルフを仲間にして自分の戦力をあげようとしているんです、ウルフは若い女の肉が大好物です。だから魔女は若い女を生け贄にしてウルフを仲間にしようとしているんです。」
その説明を聞いてあたしはゾッとした。
シモーヌはクスクスと静かに笑うと、両手を広げ語る。
「もうすぐ、ウルフがくる。この若い女を生け贄にして、あたし強くなる。」
瑠色さんは驚くとあたしの手を握った。
「いますぐ、ここから逃げましょう。」
「でも…、亜紀がっ、」
するとなにやら遠くの方から足音が聞こえてくる、犬の足音。
いや、普通の犬より足音が大きい。
瑠色さんは顔色を青くして、戸惑っていた。
「そんな…早すぎる!!」