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 それから数時間後、
 日も暮れると言う事でオレ達は休む事にした。
 幸い丁度いい洞穴を見つける事が出来たからここをオレ達のベース・キャンプとし、荷物を下ろすと火を熾した。
 夕食を済ませるとファーランは疲れたのか静かに寝息を立てて眠っていた。
「良い気なモンだぜ」
「良いじゃねぇか、休める時に休んだ方がいいんだよ。なぁバイス?」
 サイモンが見るとバイスは目を閉じながら壁に背を当てて座禅を組んでいた。
「寝てんのか?」
 するとバイスは目を開いた。
「何だ。起きてたのか」
「寝ていた」
 バイスはふてくされた感じで言って来た。
「それより何か用か?」
「いや、大したことじゃないんだけど…… 寝てたんなら良いいんだ」
「……なら大人しく寝ていろ、疲れは感じていなくとも一日中表にいただけで体力は消耗している」
「だけど寝てたら見張りができないんじゃないのか?」
「俺は気配があれば起きる事が出来る、幼い頃から身に付いた習慣だ」
「お前の子供時代ってどんなだったんだ?」
 オレが尋ねるがバイスは何も答えなかった。
「またシカトか?」
「答えなければならない事か?」
「いいじゃねぇか、仲間なら互いの事を知りあうモンだぜ」
「必要はない、仲間を組むに大事なのは互いの力量と相性だ。それ以外の検索は無用だ」
「ああそうかよ!」
 オレはふてくされながら横になる、
「ったく、可愛げのねぇ野郎だ」
「悪かったな」
 聞こえてたみたいだ。
 オレは静かに目を瞑った。

 翌日、オレ達は食糧を求めて雪の降る森の中を歩いていた。
 極寒の大地では獣があまり徘徊していないうえに野草も雪の下に埋まっている、食糧探すのも一苦労だった。
「ううう〜〜っ、やっぱ寒い〜っ」
「冬眠でもしたらどうだ?」
「アタシ爬虫類じゃないもん!」
「似たようなもんだろ」
「ち〜が〜う〜っ!」
「喋ってないで手伝え、今日の飯が無くなるぞ」
 怒るファーランにオレは言った。 
「うう〜」
 ファーランは口を3の字のようにしながら低く唸って食糧探しに参加した。
「ん?」
 するとファーランが何かを見つけた。
 それは小さな小動物が地表に出っ張った木の根に挟まって抜けなくなっていた。
 丁度大人の猫くらいの大きさだろう、4本足で全身黄と黒の虎模様だが胸元だけが白く、ウサギの様な耳に身長の半分はある長いフサフサした尻尾の小動物だった。
 ファーランが見ているとサイモンが言って来た。
「ああ、ファニーの子供だな、大人は全長3メートルはするぜ」
「良く知ってるな」
「事前に調べておいたからな…… あ、ファニーって耳が珍味らしいぜ」
「そうなのか?」
「ダメだよ! 可哀想だよ!」
「冗談だよ、大体あんなに小さいんじゃ腹の足しにもなりゃしないだろ」
 サイモンの言う通りだ。
 ファニーの耳も2つしかないから分けたとしても2人分だ。
 するとその時だった。
 木々の隙間から1匹の大きな獣が現れた。
 6メートルはある毛むくじゃらの4つの目にセイウチの様な顔に熊みたいな体の生物だった。
 その視線は明らかにファニーの子供を狙っていた。
「やべっ! グオームだぜ」
「危ない!」
「ファーランっ!」
 ファーランは雪の大地を蹴るとグオーム向けて走り出し、助走を付けてジャンプすると体を捻って飛び蹴りを放った。
「りゃああ!」
『げぇえっ!』
 グオ―ムの脳天を蹴り飛ばすと数メートル吹っ飛ばされながら地響きを立てながら地面に転がった。
 ファーランはファニーの子供が引っかかっている木の根を力づくで引きちぎる、
「恐かったね、もう大丈夫だよ」
 ファニーの子供は脱兎のごとくその場から逃げだした。
「ふぅ……」
 ファーランは満足げに一息ついた。
 しかしその時、バイスがファーランに近付いて来た。
「おい」
「えっ?」
「何故あんな事をした?」
「何でって、あの子が襲われそうになったからじゃない!」
「襲った方が悪いって言うのか?」
「当たり前でしょ! どうみても悪い奴じゃない!」
「肉食獣が肉を食う事がそんなに悪い事か?」
 ファーランは何も言えなくなった。
 どんな生物だろうと食わなければ生きていけない、バイスの言ってる事は間違いなく正論だ。
 ファーランは眉を吊り上げると両手を握りしめた。
「何よ…… アタシ悪い事なんてしてない!」
「別にお前が悪いだとは……」
「悪い事してないって言ってんでしょ!」
 バイスの声を遮るようにファーランが叫ぶ、
 ファーランは背を向けてその場から逃げるように去って行った。
「バカっ! どこ行くんだっ?」
 オレはファーランを追いかける、
 単独行動は危険だ。
 するとバイスが言って来た。
「どこに行く?」
「決まってんだろ! あいつを追う!」
「ほおっておけ」
「んだと?」
 オレは眉を吊り上げる、
「少し頭を冷やさせるべきだ。図星を指摘されて冷静さをかける奴等班にいても邪魔なだけだ」
「おい……」
 昨日投げ飛ばされたから無駄だって事は分かってる、
 だけどオレはバイスに近づくと右手の握り拳を作るとバイスに向かって放った。
「ぐっ!」
 オレの拳は明らかに奴の鼻っ柱に当たった。
 だがオレの拳に鈍い痛みが走った。
 何て固い顔してやがる?
「……少し黙ってろ」
 オレはそれだけ言うと振り向いてファーランを追った。