SAⅤIOR・AGENT
「ったく、どうすればいいのよ?」
私は頭を抑えた。
三葉さんから『後は頼む』と言われてもどうすりゃいいのかさっぱり分からない、私は普通の地球人だってのに……
そう思っていと突然不破さんを閉じ込めているフラスコが消滅した。
「不破さんっ!」
私は不破さんを抱き起こす、
「うっ…… マイ?」
まだ意識ははっきりしていないけど大丈夫そうだった。私は安心した。
「危ないっ!」
「えっ? あっ!」
不破さんが叫ぶと私は振り向いた。
意識を取り戻したのは不破さんだけじゃなかった。井浦も意識を取り戻して私の首を絞めて押し倒した。
「フーッ! フーッ!」
井浦は完全に頭に血が上って息を荒くしながらその歪んだ顔を私に近付けて来た。その姿はとても人間とは言えなかった。
「ちょっと、放しなさいよ!」
不破さんは井浦を私から話そうとするがロンのいない不破さんは本来の力を出せずにいた。
「このっ……」
私も必死で抵抗するがビクともしない、やっぱり中年でも体力のある男を跳ね除ける事は出来なかった。
すると後ろの廊下へ通じる扉が勢い良く開いた。
「ここかっ!」
すると入って来たのは兄貴だった。
「兄さんっ!」
「ま、舞? ってテメェ!」
兄貴は私に覆いかぶさる井浦を引き離すと渾身の力を込めた右拳で殴り飛ばした。
「ぐはああっ!」
井浦は再び床に転がって気を失った。
しかし兄貴の怒りはそれだけでは収まらず、マウンドポジションを取ると襟元をつかんで持ち上げた。
「よくも人様の妹を!」
このまま殴り続けようと言うのだろう、
いくら兄貴が地球人だからって相手を殴り殺さないとも限らない、そうでなくとも兄貴は私の事になると見境がない、
「兄さんもうやめて!」
「そうだよ、相手は地球人だよ!」
兄貴も完全に頭に血が上っていた。ってかキレやすい人間は多すぎる、
私と不破さんが必死で止めているともう1つの手が伸びてきて兄貴の腕をつかんだ。
「よせ」
振り向くとそこにはジャージ姿の大神さんがいた。
「バイス?」
「どうしてここに?」
「班長が担任に話をつけてくれて抜けさせてもらった。勿論速攻で帰るがな」
大神さんは私に言う、
次に兄貴に鋭い目線を向けた。
「惑星の原生生物に危害を及ぼすのは掟に反する、お前も地球人だからとて規則違反だ」
「チッ!」
兄貴は眉間に皺を寄せながら舌打ちすると大神さんの腕を振り払った。
「それより何があった?」
「……実は」
私は三葉さんの事を話した。
すると大神さんは三葉さんの入ったパソコンを見ると腕を組んで息を吐いた。
「心配はいらん、あとはサイモンが何とかしてくれる、実際ファーランが開放されたのが何よりの証拠だ」
そう言うと兄貴と不破さんが顔を合わせた。
「だな、少し心配はあるけどな」
「そだね」
兄貴はポケットに手を入れながら井浦から離れ、不破さんもその場に座り込むと結果を待った。
3人とも三葉さんの事を信じていた。
三葉さんのいたずらは生徒会にも届いている、
突然コンピュータールームのパソコンが全てアダルト・サイトにしかアクセスできないようにしたり、授業中に教師ですら分からない問題を出して授業を妨害、教師がノイローゼになって辞めかけたりと色々問題を起こしていた。
そのために里中先生や他の教師に叱られる姿を良く見かけるのだけれども三葉さん本人はちっとも反省していなかった。
大神さんは小言は言う事はあるけど三葉さんの為に頭を下げ、時には土下座をする事もあった。
確かに三葉さんは悪い人間ではない、だけど良い人間でも無い、なぜそこまで出来るのかが私には分からなかった。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki