小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

SAⅤIOR・AGENT

INDEX|80ページ/145ページ|

次のページ前のページ
 

 その頃、電脳世界では激しい戦いが繰り広げられていた。
 アックが巨大な拳を振って地面を砕くとサイモンは後ろに跳びながらそのままセイヴァー・アームズを発砲した。
『グウウっ!』
 赤いエネルギー弾がそれぞれ肩、腕、腹にヒットするがたちまち回復してしまった。
「チッ、タフな野郎だぜ」
 サイモンは皮肉っぽく舌打ちをする、
『ククク、今更泣きごとを言っても遅い、この端末自体が私なんだ。貴様は私の体の中にいるのと同じなんだよ!』
 アックはハードディスクと一体化してこの空間を支配している、そんな自分と比べるとサイモンは1つのバグでしかなかった。
『貴様は自らの手でデータを破壊したんだ。もはやガキどもを元に戻す事はできない』
「初めから渡すつもりなんて無かったんだろ? ウソならもう少しマシにつくんだな」
『フン、だまされている方が幸せと言う事もあるのにな!』
「騙されて幸せな奴なんかいやしねぇよ!」
 サイモンはセイヴァ―・アームズに向かって叫んだ。
「Δ・モードっ!」
 セイヴァ―・アームズから白いエネルギー弾が発せられるとアックを銃撃した。
『ムッ?』
 アックは顔を歪めて小さく開いた体を見る、
「オラァアアアっ!」
 さらにサイモンは銃を乱射し続けた。
 次々と銃弾を食らって蜂の巣状態になるがアックにはダメージは無かった。それどころかアックの体が大きくなっていった。
『グオオ―――ッ!』
 アックの目から光線が放たれるとサイモンんの足下を砕いた。
「うおっ!」 
 サイモンはこの葉のように宙に舞うと床にたたきつけっれた。しかしそれで終わりでは無かった。
 突然辺りが暗くなると巨大な物が自分に向かって落ちて来た。それはアックの足だった。
 小型のトラックほどもあるアックの足がサイモンを踏みつぶした。
「ぐあああっ!」
 爆煙が立ち上るとサイモンは床にめり込んだ。
『何のつもりかは知らんが要らぬ事をしたな、おかげで力が満ちてくるぞ』
「そりゃ良かったな」
 サイモンは逆境にいながらも苦しむどころか口の端を上にあげて白い歯を見せた。
「くっ、貴様っ!」
 アックはその余裕が気に入らずに右足に力を入れてサイモンを床に押し込んだ。
「がああっ!」
『そうだ、苦しめ、そして許しを乞え! そうすれば止めてやらなくもないぞ!』
「ケッ、そう言って何人の人間を騙して来た?」
『何人かなど問題じゃない、この世は騙される奴がバカなんだ。騙して生き残れるやつが本当の利口なんだよ!』
「バカはテメェだよ」
『何っ?』
 アックの声が裏返る、
「ご丁寧に全部見せてくれやがって、おかげでワクチンを作れるってもんだ」
 サイモンは一度見た物や聞いた物は全て記憶できると言う、
『貴様、初めからそのつもりで?』
「騙されんのがバカなんだよな? だったらテメェこそ本当のバカじゃねぇか」
『だ、黙れ――――ッ!』
 アックは逆上して指紋を何度も踏みつけた。
 ある程度気がおさまり足を退けるとサイモンはかすかに息はあるが全身ボロボロで、サイモンと言うデータが消滅しかかっていた。
『もう一度言ってみろ、誰がバカダっ?』
「いくらでも言ってやるぜ…… いくら優れた頭脳があろうがテストで100点取ろうが、一緒に喜んでくれる仲間がいねぇなんてつまらねぇんだよ」
 サイモンは表で待つ仲間達の事を思い出した。
 自分の無二の親友とも言うべきヴォルフ星人、まだ子供だが真っすぐでとても純粋な心を持つドラン人、口うるさいけど誰よりも周囲の事を思ってくれるメリル星人、シスコンの兄とツンデレの妹の地球人……
 自分は確かに周りには持っていない力を持っている、しかし周りは自分にはない能力や魅力を持っている、
「オレ様はあいつらといるのが楽しくて仕方ねぇんだ。仲間がいねぇテメェには分からねぇだろうけどな!」
『何を抜かスかと思えバ…… 仲間ナど! ソンな物…… 弱イ者ノ負け惜しみ…… ググっ?』
「ようやく効果が出て来たな……」
『カ、カラダガ…… ウゴカナイ?』
 これを待っていたとばかりにサイモンはふらつきながら立ち上がるとセイヴァー・アームズを見た。 
「テメェ忘れてたのか? ここがパソコンの中だって事をよ!」
 パソコンにデータやプログラムを使えば使うほど許容量は減って行く、残り少なくなれば読み込みが遅くなりフリーズしやすくなる、
 アックはこのパソコンのメイン・プログラムとなる事で破損したデータを修復できる、ならば逆に力を与える事で許容量を減らし、動きを止めたと言うのだった。
「こいつのΔ・モードはな、破損したデータを復元させる為にオレ様が新しく付け加えた物だ。もっとも個体の体を持たねぇあいつらには効きゃしねぇがな」
 サイモンは自分の左腕に銃口を突き付けると引き金を引いた。
 まるで注射のように白いエネルギー弾を撃ち込むとサイモンの怪我がたちまち治ってしまった。
「最大の武器が最大の弱点になるとは皮肉だな、これが賢い奴のする事か?」
 サイモンは尋ねるがそれどころではなかった。
『ア、アア…… ユルシ…… タス……ケテ……』
 アックはサイモンに助けを求めた。
 しかしサイモンは……
「いやだね、バカは死ななきゃ治らねぇんだよ!」
 どっちが犯罪者なのか分からなかった。
 舌を出して皮肉を通り越し冷酷とも言うべきサイモンにアックはゾッとなった。
 そしてセイヴァー・アームズの銃口をアックに向けると肩目を瞑って引き金を引いた。
「α・モードッ!」
 金色のエネルギー弾がアックの胸を貫通する、
『ギャアアアアッ!』
 アックは金色の粒子となってゼルベリオスに転送された。
 サイモンはすぐにパソコンから脱出、3次元世界へと戻って来た。そこにはサイモンの信じる仲間達がそこにいた。