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 いきなりギルとロンからの波動が途絶えたらしい、
 三葉さんの調べだとこの辺りで空間のねじれが観測されたと言う、
(本当に大丈夫ですか?)
 私はなるべく小声で話した。
『心配すんなって、オレ様に抜かりはねぇよ』
 そうは言うが心配だった。
 これは三葉さんの作戦だった。
 今三葉さんは体をデジタル信号化させて端末の中に入り込み、敵の目の前に現れれて三葉さんが襲撃すると言う物だった。
 だけど受付はおろかロビーには誰もいない、一体どうすれば良いのかと思っていると、
「どうかなさいましたか?」
 振り向くと誰もいなかったはずの受付の中に人がいた。
 私より年上のストレートヘアの女性だった。
 私は女性に向き合うと前髪を直しながら言う、
「あ、あの、このゼミに入会したいんですけど、どうしたらいいですか?」
「はい、それでしたらこのバッチをつけて3階へどうぞ、連絡をしておきますので」
「はい」
 テーブルの上に出された丸い金属製の赤ん坊の親指くらいの丸いバッジを左胸につけるとエレベーターに乗って3階へ移動した。
「いらっしゃいませ」
 扉を出ると1人のスーツ姿の女性に出迎えられた。
「受付から話は聞いております、こちらへどうぞ」
 女性は一番近くのドアを開ける、
「どうも…… きゃっ?」
 私は言われるままに入ろうとすると彼女にいきなり背中を強く押され、私は床に転んでしまった。
「痛っ……」
 私は体を起こした。
 周囲を見回すと近くにあった物に私は驚いた。
「不破さんっ!」
 まるで便ズ目にされたような不破さんに私は近づいて巨大なフラスコを叩いたがビクともしなかった。
『そんな事をしても無駄ですよ』
「誰?」
 薄気味悪い声が聞こえて振り向く、
 そこには1台のパソコンがあり、画面に赤い1つ目が浮かんだ。
 それと同時にパソコンのすぐ近くにあった扉が開くと中年の男が入って来た。そいつはさっきホームページで見た井浦・誠太郎だった。
『貴女は地球人ですか、セイヴァ―・エージェントにはその惑星に協力者がいると聞きますが、どうやら本当だつたようですね』
「あ、貴方は?」
 私は左手のセイヴァ―・アームズを構える、
『おっと、助けを呼ぼうとしても無駄ですよ、何せそのバッジはあらゆる電波を遮断してしまうのですからね』
 そう言われて私はバッジを外そうとするがどういう訳か外れなかった。ただのクリップ式なのにどうして?
「その左手の端末に仲間が入っているのでしょう? 私と同じタイプの異星人と見ました。ですが残念な事にそのバッジには特殊な細工が施してありましてねぇ、ちょっとやそっとでは外れないんですよ」
 何でそこまで?
 と思っていると『そいつ』はこのビルに入ってからの私達の行動や会話を聞いていたと言う、
『あ、そうそう、貴女に良い物をお見せしましょう』
 画面が切り替わると映し出されたのは階段に座る兄貴だった。
「兄さんっ?」
『ほう、ご兄弟? そこまでは分かりませんでした』
「2人に何をしたのよ?」
『何をと? まるで私達が悪い事をしているような言い方ですねぇ、私達は地球の子供達を思ってやってる事なのですよ』
「地球の?」
『そう、この地球は学歴こそが全てなのでしょう、私はその手助けをしているだけです』
「ふざけないで、だからって命を削ってまでする必要なんてないわ!」
『健康と成績を秤にかければどちらかを選ぶかなど一目瞭然、それにこれは親の意志でもあるのですよ』
 このゼミの入会者達は成績を上げて勝ち組に進ませたいと言う親のエゴで入れられた子供達だと言う、
「何が親の意志よ、勉強は親の為にするんじゃないわ!」
『そんな事はどうでもいいのですよ、今は成績の為なら死んでも構わない時代でしょう?』
「そんな事は無い! 成績が上がったって命を落としたら何の意味も無いわ!」
「綺麗事だな」
 すると井浦が言って来た。
「どんな言い訳をしても所詮はこの世の中を生きて行けるのは頭の良い人間だけだ。弱い奴は人間扱いすらされない、それが現実だ」
「あなた…… 地球人なのにどうして?」
『どうして? 異星の人間と手を組んでるだけなら貴女も同じでしょう?』
「同じじゃない、私達は悪い事をしている異星人を検挙する為に協力してるだけよ!」
『同じですよ、互いの利害の一致で手を組む事は悪い事ではありません、私は優秀なパートナーと供にこの星でビジネスをしてるだけですよ』
 そいつは井浦を見た。
『ただ彼は少し不幸な人間でしてね、周囲のバカどもに理解できずに仕事をクビにされてしまったんですよ』
 井浦は元々高学歴で有名な大学を卒業し、教員免許を会得してとある私立中学の教師となった。
 しかしある日生徒に暴力を振るって事件を起こしてしまい勤めていた学校から解雇処分を受ける事となったと言う、
 その話を聞いた瞬間、私は保健室で聞いた井浦の事を思い出した。
「どこかで見た顔だと思ったら……」
 あれは2年前、兄貴が宇宙ステーションに行く少し前の事だった。
 突然テレビで私立中学の教師が生徒に暴行を加えて全治1ヵ月の大怪我をさせると言う事件が起こった。
 教師でなくなった井浦は無色となり、ヤケ酒で酔っぱらってゴミ置き場で倒れていると近くにあったパソコンが光り出したと言う、それが目の前にいる異星人だった。
 その後手を組んだ二人は銀行にハッキングし大金を入手、さらにこのビルを借りてゼミを立ち上げたと言う、
 過去の事を思い出した井浦は顔をゆがませて両手を握りしめると怒鳴るように言って来た。
「ふざけるな! オレはただ出来の悪い生徒に制裁を加えただけだ! それを回りの奴らは暴力暴力って言いやがって…… 成績だけが人間を決める物だ!」
「そんなの間違ってる!」 
 私は言い放った。
「何が制裁よ! アンタは自分の良いように罪を正当化させてるだけじゃない!」
「違う、全て本当の事だ! 成績の低いバカは生きて行く勝ちは無いんだ!」
「バカはアンタよ! 学校をクビになったのはアンタが成績でしか人を見ようとしなかったからじゃない、人の責にしないで!」
「な、何だと……」
 井浦は眉を吊り上げながら近づく、
「このオレがバカだと? もう一度行ってみろっ!」
 井浦は右手の甲を私の左頬に叩きつけた。
「きゃっ!」
 私は吹き飛ばされて床に転がる、途端持っていた荷物の中身である筆記用具に携帯電話などが床にぶちまけられた。
「言葉に気をつけろ、オレは何も悪くない、悪いのはオレを認めない奴らだ!」
 今度は私の胸倉をつかみ持ち上げると握った拳で私の顔を殴ろうとした。
 私は目を閉じるがその時だった。