SAⅤIOR・AGENT
舞が人質に取られてオレは手も足も出せない状態にいた。
赤黒い肌に緑の1つ目、両肩には黒いドーナツみたいな形状の飾りを腕から通した銀の全身タイツみたいな宇宙服を着たこいつには見覚えがある、
名前はキュクロ星人ドロス・ドー、こいつも惑星間におけるビップ暗殺などの罪で指名手配されている凶悪犯だった。
そいつに今舞が捕まってる、こいつを逃す訳には行かないが舞の命には返られない、
『キヒヒ、動くなよぉ、この地球人のメスは地球から逃げるまで預からせてもらうぜぇ……』
「むぐっ、んん〜〜」
舞は手を伸ばすがオレは何もできない、一か八かテレポートで背後に回ろうかと迷っていると……
「ガァアアア――――――ッ!」
突然耳を劈く雄叫びが洞窟内から聞えてきた。
途端黒い影が勢いよく飛び出すと三日月をバックに鋭い爪をドロスに振り下ろした。
『ギャアアアっ!』
ドロスの右肩を切り裂かれて緑の血飛沫を立てると舞を離して傷口を抑えた。
「あっ!」
舞はその場に倒れようとするがとっさにそいつが舞を抱き上げてオレの側までやって来た。
「あ、ありが…… ひっ?」
「何だシロガネ・マイ?」
バイスは舞を見る、
「お、大神…… さん?」
舞はそいつの顔を見た瞬間両肩がビク着いた。
そりゃそうだ。こいつの正体を見れば誰だって驚くだろう、
大きく突き出た耳に全身白銀の体毛に覆われ、巨大な口にはノコギリのような歯が並び青い瞳、鋭い爪の生えた5本の指の腕のそいつはバイスの本当の姿だった。
こいつは地球ではワーウルフと呼ばれていて、基本ファーランと同じで自力で変身と解除を自在に出来る、だが感情が昂ぶると変身が解けちまうって言う欠点がある、
バイスは舞を降ろすとドロスを見た。
「奴は…… キュクロ星人のドロスか?」
「ああ、大方クォ―ルに復讐しようって奴が雇った奴だろ」
「なるほどな…… こいつはオレがやる!」
バイスは一歩前に出る、
こいつはもうこうなったら千鶴ちゃんやサイモンでも止まらねぇ、ドロスはバイスの怒りに火を点けちまった。
『テ、テメェ』
ドロスは左手の銃口をバイスに向けてレーザーを発射した。しかし当ったと思った瞬間バイスの体をすり抜けた。
『なにっ?』
ドロスは驚くとバイスの姿が消えてしまった。
「えっ? どう言う事?」
「残像だ。あいつは移動速度がメチャクチャ速いんだ」
舞にオレは説明した。
『くそっ、ど、どこだ?』
ドロスは気配で撃とうとするが発射後にはそこにおらず、混乱していた。
「がああっ!」
するとバイスは地面を蹴ってドロスの背後に鋭い爪を振り下ろした。
『ぎゃああっ!』
衣服が切り裂かれて5本の爪跡から血飛沫が宙に舞う、
『このっ』
ドロスは足を踏ん張って堪えて振り向いて右手の光線銃を向けるがバイスが自分の右手で受け止めた。
「はあっ!」
さらに右足を回し上げて膝の関節でドロスの腕を固定するとそのまま顔面を蹴り続けた。
『がああっ!』
たとえ異星人でも頭は弱点だ。
攻撃を食らったドロスは顔を抑えながら後ろによろけると光線銃を落とした。。
「バイスっ!」
すると洞窟内からサイモンとファーランが出てきた。サイモンの手にはバイスのセイヴァ―・アームズが握られていた。
「受け取れ!」
バイスはセイヴァー・アームズを受け取るとα・モードを発動させた。
「キュクロ星人ドロス、惑星の不法侵入に各惑星での異星人殺害、ならびに地球人に危害を及ぼした罪で逮捕だ!」
黄金に輝くポールアクスでドロスの体を切り裂くとドロスは光の粒子になって消えていった。
『ぎゃああああっ!』
ゼルベリオスに転送終了、事件は解決した。だけど後味はすごく悪かった。
やがてオレ達は全ての経緯を千鶴ちゃんに話すとクォ―ルの遺体もゼルベリオスに護送した。
もうすぐ夜半過ぎになろうとしている時だった。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki