SAⅤIOR・AGENT
兄貴が赤いボタンを押すとさっき見たとおり赤いレーザー・ブレードとなった。
「こいつはセイヴァ―・アームズ、セイヴァ―・エージェントにしか与えられない万能武器だ」
『駆けだしだがな』
「だ、誰?」
突然聞き慣れない声が聞えて着て私は周囲を見た。
「おい、勝手に喋るなよ相棒」
兄貴は左手で胸の私があげたお守りを持って喋った。
「私の…… お守り?」
『始めまして』
「しゃ、喋った?」
私は両肩をビクつかせる、
「こいつはギル、ゼルベリオスで造られた人工生命体で、俺の頼れる相棒なんだ」
3年前のスペースコロニー爆破の時に兄貴は宇宙空間に投げ出された。
だが駆け付けたセイヴァ―・エージェントに助けられて一命をとり止めゼルベリオスに運ばれたのだと言う、
「それでそこで修行してこいつと知り合ったんだ」
その言葉を聞いた時だった。
私の心の中で燻っていた何かが弾けた。
右手に拳を作ると口を開いた。
「……どうして?」
「ん?」
「何でそんな所に行ってたの? どうしてもそこに残らなきゃいけなかったの?」
「ん、ああ…… 俺が望めばすぐ帰してくれるとは言ってたけどな…… だけどカッコイイからさ、どうしてもって俺が頼んで…… 舞?」
私は歯を軋ませて肩を震わせる、すると兄貴が手を伸ばしてきた。
「舞、どうした。やっぱり怪我でもしたのか?」
「触んないでよっ!」
「ま、舞?」
私は涙が溢れて止まらない目で兄貴を睨みつけた。
「……何が地球を守るよ、何が修行してきたよ、一週間で帰ってくるって約束したじゃない!」
「あ、いや、それは……」
「今更帰って来てロボット倒して何威張ってんのよ? それで誰か守れたって言えるの? 散々1人にしておいて偉そうな事言わないでよ! 一番カッコ悪いわよ!」
「お、俺は……」
「うっさいっ、喋んなバカっ!」
私は背を向けて走り去った。
「舞待てっ、まだ……」
兄貴が私を止めるけどそんなの関係ない、私は公園を飛び出した。
暗い町を私は息が切れてるのも忘れて走った。
私は今まで兄貴が完全に死んだと思ってた。でも実は兄貴が生きてて、しかも私に何も知らせずに『カッコ良い』からなんて理由で遠い星に行ってた。これが怒れずに居られなかった。
「バカバカ、兄貴のバカッ!」
私は涙を拭い捨てる、一体私がどんな気持ちでいたと思ってるのよ?
私はこの2年間を思い出す、元々友達を作るのが下手だった私には学校は親しい人間は居なかった。嫌われてるって訳ではなかったけど結構浮いた存在だったから影でコソコソ言われる事もあった。マスコミからも連日質問攻め、しかもあのだだっ広い家で1人きり…… それが何より嫌だった。
兄貴が帰ってこない、兄貴が居なくなった。その現実に眠れない日が何日も続いた。
頭から毛布を被り不気味なくらいに静かな夜の闇の中で1人ぼっちで怯えて震える、それがどれだけ辛いか、どれだけ悲しいか考えた事があるのか、あのバカ兄貴!
「……はぁはぁ」
私はとうとう走れなくなり立ち止まった。そして近くの電柱に背を凭れと息を切らせながら右手で後ろの電柱を叩いた。
「くそっ! くそっ!」
私はジレンマだった。
私が悪いんじゃない、悪いのはあのバカ兄貴なのに…… 何でこんなに苦しまなきゃいけないのよ? 何で生きててくれて嬉しいはずなのに涙が出てくるのよ?
「……ぶん殴っておけば良かった」
すでに一発殴ったけど、あれじゃ気が済まない!
あのバカ面をゴリラの雌にすらモテないようにボコボコにしてから逃げて来るんだった。そう思っていると……
「ん?」
私は前を見るとそこにはさっきのコートの男(ロボット)が2体、私の前に立っていた。
「ああっ?」
私は身構える、
するとロボット達が左右に退くと真中に不気味な影が現れた。
私の背の半分しかない、ゲームに出てくる魔法使いみたいな黒いフードとマントを羽織った怪人だった。これが兄貴が言ってた宇宙人?
『お前には役に立ってもらう、あの男を消すためにな……』
身も気もよだつような声が聞える、いや違う! 頭の中に響いてくる、フードの下から赤い不気味な複数の目が輝くと私は気が遠くなって行った。
(あ、兄貴……)
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki