SAⅤIOR・AGENT
一方私はバスで高巳山に到着し、山道を登っていた。
「ロン、兄さん達はどこ?」
『この先にお嬢がいる、多分そこに……』
「あっ?」
空に突然ものすごい数の鳥が飛んだと思うと空に黒い煙が立ち昇っていた。
「兄さん!」
私は顔を青くしながら先を急いだ。
今履いている靴は山歩き用じゃ無いから山道を昇るのが一苦労だった。
それでも草木を掻き分けて大急ぎで先を急ぐ、そして兄貴達がいる場所にやって来た。
だけどそこで見た光景に私は息を飲んだ。
兄貴が追い詰められていた。
「がっ!」
首に鎖が絡まった兄貴は宙高く舞い上がっては地面に叩きつけられていた。
『オラオラ! もっと苦しめ!』
鎖を持ってる異星人がボーガと言う奴だろう、残忍な笑みを浮かびながら兄貴を痛めつけていた。
『お嬢!』
「えっ?」
ロンに言われて振り向くとそこには不破さんがいた。グッタリとしていて意識が無いようだった。
多分兄貴がもたせたんだろう、ギルが右腕に握られていた。
「不破さん!」
私は近づいて不破さんの両肩を揺すった。
しかし不破さんは反応しなかった。
『マイ、あまり動かすな! 今ファーランの怪我を回復中だ』
右手のギルが言って来た。
サポーターは生物が本来持つ再生能力を高める能力を持つと言う、私も1回世話になったから分かる、
ギルから薄い光が発せられると不破さんを包み込んだ。
『地球人なら即死どころかまともな形はしていなかっただろうな、強靭なドラン人の肉体だからこそ何とか耐えたと言うところだ』
『マイ、私をお嬢に! このままじゃタクミが危ないわ』
私は兄貴の方を見る、
兄貴は大木に叩きつけられると背を擦りながら地面に尻餅を付いた。
セイヴァ―・アームズも兄貴の手から離れると光の刃が消滅して地面に転がった。
『ハハハッ! この星のセイヴァー・エージェントもこんなもんかぁ? またオレの前科が増えちまうなぁ!』
こいつは罪を重ねる事を何とも思ってない、それどころか勲章のように思ってる、メチャクチャ危険だ。
「うん、お願い!」
私はロンを不破さんの左手に握らせた。
たちまちロンからギルと同じ薄い光が発せられて不破さんを包む光が濃くなった。
ロンの力が加わった事により不破さんの再生力が2倍に膨れ上がったのだった。
2人に任せておけば不破さんは大丈夫だろう、そう思った私は兄貴の方を見た。
ボーガは巨大な岩石のような拳で動けない兄貴を殴りつけていた。
「ぐっ! がっ!」
兄貴は苦しそうだった。
改造人間でも一方的にダメージを受けて手の出しようが無い、両手で防御が精一杯だった。あのままじゃいつか潰される、
『人様の物に手をかけようとするからこうなるんだぜ、弱ぇ奴は弱ぇ奴らしく引っ込んでろ!』
「そりゃ、テメェだろ…… 他人の金や命を奪って笑いやがって……」
『ああっ? そりゃ当たり前だ。弱ぇ奴のモンを強ぇモンが奪うのは当たり前だ! 金も命もなぁっ!』
「ふっ…… ざけんな!」
兄貴は顔を怒りで歪めると何倍もある相手の拳を両手で重ねて受け止めた。
『ぬっ? テメェ!』
兄貴は渾身の力で巨大な拳を押し出しながらボーガをにらみつけた。
「金が大事なのは認める…… だが命だけは別だ。命を金なんかと同格にした挙句に粗末に扱うテメェだけは絶対ゆるさねぇ!」
兄貴はジリジリと押し出し始めた。
だけど兄貴1人じゃ勝てないのは目に見えていた。
そう思ったとたん私の側でうめき声が聞えた。
「う……」
「不破さんっ! 目が覚めたのね?」
『お嬢っ しっかり!』
「マ…… マイ…… ロン……?」
私は不破さんの顔を覗き込んだ。
まだ意識ハッキリしてなさそうだけど私の事は分るみたいだった。
「不破さん! 兄さんを助けて!」
「えっ?」
『無茶を言うなマイ! ファーランはまだ完全に回復していない』
「だけど!」
私が何も言えなくなると不破さんが兄貴の方を見た。
「アタシ、行くよ!」
不破さんは辛そうに体を起した。
見た目的に怪我は治ったみたいだけどダメージが残ってるんだろう、
『お嬢! その体じゃ無理よ!』
「大丈夫、部分開放するから」
「部分開放?」
私は首を傾げた。
異星人が姿形を変えるのには訳がある、それはもちろんカモフラージュの為ともう1つ力の制御だった。
ただ異星人の中には姿形は変わっても力が有り余りすぎて自分ではコントロールできない者もいると言う、そう言った者達はセイヴァー・エージェントや宇宙警察から制御装置のような物を貰う事になっているらしい、
ドラン人は大人ならば自分でも制御するのは容易いのだが不破さんは子供なのでロンに制御してもらっていると言う、
『今のお嬢の体力じゃ最高5分が限界よ』
「大丈夫、それまでに終わらせるから」
不破さんはボーガに向って走り出した。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki