小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

SAⅤIOR・AGENT

INDEX|44ページ/145ページ|

次のページ前のページ
 

 待つ事、数十分後、兄貴がやって来た。
「お〜い」
「兄さん!」
 私はロンを手渡して事情を話した。
「あいつ、サポーター手放して何してんだ。」
「そんな事より不破さんを、結構遠くに行っちゃったみたいよ」
『この惑星の、この地域の地図と検証した所、お嬢は高巳山と言う所に向ってるわ』
「高巳山? そう言や千鶴ちゃんが言ってたな」
「何かあったの?」
 私が訪ねるとギルが言って来た。
『班長がこの地域に配属されて始めて関わった事件だ。20数年前に異星人が現れて騒ぎになった事がある、しかし班長や他のセイヴァー・エージェントが情報操作をして消したはずだ』
「いくら情報操作しても当事者達や一部のオカルトマニアとかがネットで騒いでる、完全に隠しきれるものじゃ無いだろ」
 私は里中先生が言ってた事を思い出した。
 地球に来た異星人は本当の姿を人前にさらしてしまい、それが人々に語り継がれて神話や伝説、UMAとして残っている、
「全くあいつ、都合が悪くなるとすぐ家出しやがって……」
「その割にはあんまり嫌がって無いわね?」
 私だったら絶対に関わったりしなかっただろう、だけど兄貴は面倒とは思っているが迷惑と言う顔はしていない、
「2年前からそうだったからな」
 何でも不破さんは候補生時代から何かある度に寄宿舎を飛び出しては兄貴に連れ戻されていたと言う。
「何か不破さんの保護者みたいね」
「ああ、あいつ家族がいないからな」
「えっ?」
「あいつな、幼い頃に両親を亡くしたらしいんだ」
 兄貴の話によると不破さんの両親はセイヴァー・エージェントで、任務に向った惑星で命を落としたと言う。
 生まれたばかりの不破さんはドラン星の保護施設で育てられたらしく、今でこそ不破さんは明るいけど始めて会った頃はすごく内気な性格だったらしい。、
「オレと出会って少しづつ明るくなっていったんだ。まぁ、少しは大人しくなって欲しいんだけど、元気が一番だしな、親がいない悲しみはオレにも分かるからな」
 兄貴は鼻で笑うと私は思い出した。
 さっき不破さんが誰かに似ていると思った事、あれは私に似てるんだった。
 性格はまるで違うけど、私も兄貴も両親がいない気持ちは分かる、だけど私は兄貴すらいない時期があった。
 普段陽気に振舞っているのは家族がいない事を紛らわす為だとしたら? アニメやマンガにはまったのは兄貴が教えたって言ってたけど、それを見せる事で不破さんに元気になってもらおうとしたとしたら?
「とにかくタクシー拾って……」
 その時だった。兄貴のポケットから音楽が鳴り響いた。
 兄貴はズボンのポケットから自分の携帯電話を取り出した。
「はい? ああ、千鶴ちゃんか…… えっ? 出撃?」
 兄貴は顔を強張らせた。
 折角不破さんを見つけたと思ったのに最悪なタイミングだった。だがそれだけでは無かった。
「何だって…… ホントかよ? 分った!」
「どうしたの?」
「とんでもない事になったぜ」
 兄貴が舌打ちをした。
 数日前に地球滞在の異星人が殺されると言う事件があった。
 被害者はミューロ星人アルヴィ・シンガー、しかしそれは偽名で、本当の名前はシーヴィ・ロード、彼は宇宙を渡り歩き貴金属類を強奪していた宝石窃盗犯だった。
「あまりにも名が知れ渡りすぎたから地球に来てほとぼりが冷めるのを待ってたんだろう、隠した宝石も地球のどこかに隠したんだ」
『だが奴には相棒がいた。名はゴブル星人ボーガ・リード』
 ギルが説明してきた。 
 その異星人は宇宙警察5名、セイヴァー・エージェント3名を殺害した事で各星系に指名手配されていた。
「多分分け前か何かで揉めたんだろ、それで相棒に殺されたって所だ。しかも奴は今高巳山に向ってるって情報が入った」
「で、でも不破さんは強いんだから、そんな奴が来たって……」
『いいえ、お嬢は私がいないと本来の力の半分も出せないわ』
「そんな、この間自販機持ち上げてたじゃない?」
 私は不破さんと始めてあった時の事を思い出した。
『あの時はまだお嬢の力を地球人と合わせてなかったからよ、今のお嬢はマイと同じ位の力量しか無いわ』
「それじゃ余計まずいじゃない!」
「ああ、オレはこれから行って来る、お前は先に帰ってろ、ロン、今すぐファーランの波長をギルに転送してくれ」
『分ったわ』
「ちょっと待って、私も連れて行って」
「何言ってんだ。無理に決まってんだろ!」
『残念だがマイ、タクミは君を連れてテレポートできるだけの力は持っていない』
 ギルの言葉に私は何も言えなくなった。
 だけどテレポートは兄貴の生命力を一時的にだけど消耗する、フルパワーの状態ならともかくそんな状態で戦えばどうなるか……
「心配すんなって、あいつの首に縄かけてでも連れ戻してくる」
 兄貴は目を閉じると眩しい光と供に姿を消した。
 私はその場で立ちすくみながら右手を強く握り締めた。
「何よ、人の気も知らないで……」
 胸の中に物凄い不安が残っていた。
 それは2年前のあの時と似ていた。帰ってくると言っておきながら帰ってこなかったあの時と同じように……
 私は手の中に握られているロンを見た。
「やっぱりほおっておけない!」
『何をするの? マイ?』
「私も行く!」
『無茶よマイ、危険すぎるわ!』
 ロンの言葉も聞かず、私はその場から走り出した。