SAⅤIOR・AGENT
筋書きはこうだった。
その能力を使って生徒達の中からサイコキネシスの得意な人とテレポートの得意な人を探し出し、まずはテレポートの得意な人に『秘密をバラされたくなかったら理科準備室から塩酸を盗んで来い』とでも言ったんだろう、
そして盗んだ凶器を人目の着かない場所に置き、サイコキネシスの得意な人に回収させて水城先輩の頭上に落とした。
だけどここで問題が起こった。異星人だったゆえにテレポートを使える人が塩酸その物を知らなかったか、もしくは塩酸の瓶が棚の一番奥にあって他の瓶が邪魔で取れなかったからかは分らない、だけど凶器の事を知ってるのは持ち出した者か指令を出した者だけだ。
「………」
仙道会長はまともに私と目を合わせる事ができなかった。
自分は自分の手を一切汚さず、なおかつ他人を脅迫して水城先輩を脅し、怯えている所を優しく接して彼女の心をつかみ取る、1番汚くてたちが悪いやり方だった。
私が話し終えると仙道会長は口の端を上にあげて笑い出した。
「なるほどな、それなら僕にだって犯行は可能だな…… 確かに僕は地球人では無いし、サイコメトリー能力も持っている、だけどそれだけで犯人扱いされたらたまった物じゃないね」
仙道会長は息を吸うと言って来た。
「大体君の言っている事はあくまでも推測の段階だ。証拠がまるでない」
「証拠?」
「そうだ。どうしても僕を犯人扱いした胃のならば証拠を持って来て欲しい物だね」
確かに今のままならただの私の空想でしかない、そう、今のままならばだ。
「証拠なら…… ここにあります!」
私は左腕のセイヴァー・ブレスを見せた。
「異星人なら知ってるはずです、これはセイヴァ―・エージェントの協力者の証」
「それがどうしたと言うんだ?」
「これには色々な機能がついてるんですけど、その内の1つがこれです」
私は念じながら左腕を体育倉庫の方に向けた。
するとブレスが青く点滅した。
これは生命反応受信機能で、かざした方にいる生命エネルギーを感知する事ができるのだ。
体育倉庫の中に生命反応がある、仙道会長は人がいるのに鍵をかけようとしていた。
「そ、それは……」
仙道会長は口ごもった。
最初からおかしいと思った。
水城先輩が怪我をしてから保健室に現れるのに都合が良すぎた。
これは自分が見ていたか、もしくはサイコキネシスを使う異星人の生徒から報告を受けたかのどちらかだ。
そして不破さんがいる限り水城先輩へのいやがらせをするのは無理だと考えて別の手を考えた。その手とはこの使われなくなった体育倉庫に監禁する事だった。
「その中に水城先輩がいるんじゃないんですか? 百歩譲って違ったとしても中に誰かいるのにどうして鍵を閉めるんですか? 明らかに普通じゃありません!」
誰かいようものなら内側から扉を叩いたり叫んだりすれば表に聞える、だけど何も聞えて来ない、つまり叫んだり助けを求める事が出来ない状態にいると言う事になる、
どうやら私の推測は正しかったみたいで、仙道会長は顔を強張らせて身を震わせるた。
「くっ……」
「先輩を返して!」
私は仙道会長から鍵を奪おうと手を伸ばした。しかし仙道会長は私を振り払った。
「離せっ!」
「きゃあっ!」
私はその場に倒れた。
「邪魔をするな!」
仙道会長は今までに見せた事のない顔で私を見下ろすと私の胸倉をつかんで立ち上がった。
「やっと彼女を手に入れたんだ。誰にも渡すもんか!」
「は、離してっ!」
私は必死で振りほどこうとするがちっともビクともしなかった。そりゃ異星人とはいえ相手は男だから、女の私が腕力でかなうはずがなかった。
「マイっ!」
するとそこへ不破さんがやって来た。
不破さんは助走をつけるとジャンプして某特撮の改造人間(今は違うらしい)も真っ青になるくらいのキックを仙道会長に食らわせた。
「ぐはっ!」
仙道会長は地面に転がる、勿論私もその反動で再び地面に尻餅を付いた。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki