SAⅤIOR・AGENT
私が机を叩いて立ち上がったときだった。私は里中先生の見ている物が気になった。それは生徒達の写真だった。
「先生、それは?」
「ん? ああ…… この学校にいる異星人の生徒達よ」
里中先生はこの写真の中の誰かに超能力を使える犯人が居ると考えて調べていた。だけど全員には犯行が不可能だと言う、
「硫酸強奪時、水城さん襲撃時、そして貴女達を襲った時間にアリバイが無い人間がいないのよ」
「そうなんですか? テレポートなら短時間で凶器を強奪できるんじゃ……」
「凶器はそうでも貴女達を襲ったのは別の能力、あれはサイコキネシスで動かしたものよ、テレポートが使えるからってサイコキネシスが使える訳じゃないのよ」
「そうなんですか?」
「超能力者にも得手不得手がいるのよ」
そう言えば兄貴もテレポートはあんまり得意じゃないって言ってたな……
この中に犯人がいないとするとやっぱり外部の人間って事になるのか…… そう考えていると1枚の写真が私の目に映った。
「ああ、彼も異星人よ、以前話した先天的に超能力を使えるタイプ、ただ……」
その話を聞いた瞬間、私の中で全ての歯車が噛み合った。
「じゃあやっぱり…… あれは!」
「どうかしたの?」
不破さんが椅子を蹴って立ち上がった。
「水城先輩が危ない!」
「はい?」
私は保健室を飛び出した。
向ったのは旧校舎だった。
この未だに木造のこの旧校舎は普段は部室を持たない部活の活動の場や倉庫代わりに使われている、
私は息を切らせながら旧校舎の体育倉庫にやって来た。
そこにいたのは仙道会長が鍵を閉めようとしている所だった。
「し、白金君?」
「仙道会長……」
私は両肩を大きく上下させる、
「どうしたんだい、そんなに息を切らせて?」
「先輩は…… 水城先輩はどこですか?」
「えっ? ……ああ、彼女は帰ったよ、休養を思い出したとかで」
「嘘つかないで!」
私の声に驚いて仙道会長の顔から余裕の笑みが消えた。
「水城先輩を襲った犯人は、貴方だったんですね!」
「な、何を言って……」
「いえ、正確に言うと襲ったのは別人…… でも黒幕は貴方よ!」
「そんなバカな、何を根拠に?」
「昼間、貴方は私達言いました」
水城先輩に兄貴が帰ってくると言うのを話しに行った時『君達のおかげで水城君が被害に合わなくてすんだ』と言って来た。
「どうして分ったんですか? まるで見ていたような言い方じゃないですか!」
「心配になって電話をかけたんだ。僕だって保健室で水城君がストーカーの被害にあっている事を聞いたんだ。おかしくはないだろう?」
「じゃあ数日前に水城先輩が襲われた時、凶器の事について話しましたよね、あれはどう説明するんですか?」
「凶器? ……ああ、塩酸か」
「やっぱり」
「えっ?」
「凶器は塩酸じゃなくて硫酸でしたよ!」
「なっ?」
仙道会長は顔を引きつらせた。
ゼオ星人、ジュドー・アヴィス、それが仙道会長の本名だった。
彼等の一族は先天的に相手に触れる事で心を読み取るサイコメトリー(物や人に触れる事で過去を見る事ができる)能力を持っていた。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki