SAⅤIOR・AGENT
私は彼女を保健室に連れて行った。
正直苦手だけど、里中先生しか居なかったからだ。
「これで良しと」
里中先生は水城先輩の傷口に伴奏工を貼り付けた。
「しばらくすれば元に戻るわ」
「ありがとうございます、里中先生」
水城先輩は頭を下げた。
「貴女も…… ええと」
「あ、私は白金・舞です。昼間会いましたよね」
「はい、よく覚えています、ミツルギ・タクミさんの妹さんですよね」
「えっ、どうしてそれを?」
私は兄貴の事を話してない、となると兄貴か里中先生が話したのかしら?
「ああ、それはね……」
里中先生が話そうとした瞬間だった。
「失礼します」
扉が開くと1人の男子生徒が入ってきた。
その人には見覚えがある、水城先輩より1つ上、私より2つ上の3年生、黒髪の後ろ髪を短く切り、前髪を七三分けにした彼には見覚えがある、生徒会長の仙道・彩樹だった。
仙道会長は水城先輩の側に立った。
「仙道会長」
「何時まで経っても君が来ないからね…… 気になって探していたら、怪我をした生徒が居たって聞いたものだから」
「だ、大丈夫です。彼女が助けてくれたので……」
水城先輩が言うと仙道会長は私を見ると頭を下げた。
「そうか、水城君が世話になった」
「あ、いえ、私は別に……」
私は両手を振って謙遜した。
確かに私は叫んだだけだし……
「それより、何があったんだ? 塩酸の瓶が落ちてきたらしいけど」
「あっ……」
「どうかしました?」
すると水城さんは俯いた。
仙道会長が入ってきた事で話の軸を折られたから話辛くなったんだろう、だけど里中先生が話を切り出した。
「水城さん、今回の事は悪戯では済まされないのよ、私達を信じて事情を話して」
「……はい」
水城先輩は頷いた。
数日前、水城先輩の元に一通の封筒が送られた。それは脅迫状で、新聞の切抜きで『お前の秘密を知っている』と書かれていた。
それ以来彼女の家には無言電話やファックス、学校の靴箱の中には虫の死骸が入れられていたりしたと言う、
「それって、ストーカー?」
「でしょうね」
里中先生は頷いた。
一方仙道先輩も両手組んで考え込んだ。
「……校内に不審者が入り込んだのかな?」
「そうね、警備体制を強化させるわ。ただ校内の生徒と言う可能性も捨てきれないわね」
里中先生が言うと仙道会長は食ってかかった。
「待ってください、ウチの生徒にそんな事をする者が居るとは思えません!」
会長は生徒を信じてるんだろう、里中先生の推理を否定した。
するとその時、私は水城先輩の顔色が優れないのに気がついた。
「先輩、どうかしました?」
「えっ? あ、別に……」
「色々あったんで疲れたのよ、今日はもう帰らせましょう」
里中先生は微笑しながら言って来た。
「分かりました。生徒会の仕事は我々だけで行います、では僕はこれで」
仙道会長は一礼すると保健室から出て行った。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki