SAⅤIOR・AGENT
時が流れて週明けの早朝、
朝起きると兄貴からメールが届いていた。
『ぐっど・もーにんぐ舞、お兄ちゃんは今日は仕事だけどいい子にしてるんだぞ(>▽<)』
あのバカ兄貴、子供扱いするなっての(>3<)
そうメールを返すと私は学校に向った。
通学途中のバスの中、窓の外を見ていた私の頭に里中先生の言葉が浮かび上がった。
『ブレスを持つ者が異星人の存在を話そうものなら、その時は持ち主の記憶を消す事になる、そうなればお兄さんは貴方の前から去るわ』
あれから今に至るまでその言葉が頭の中からその言葉が離れなかった。
もしこの目で異星人を目撃して『この人異星人だ』なんて言わないと言う保証がどこにも無い、
「……まぁ、今まで合わなかった訳だし」
あの学校に何人通っているか分からないけど生徒と教師を含めて30人と少し、向こうも地球人にバレないように気をつけてるみたいだし、それに今まで会った事がないんだから滅多な事では現れ無いだろう、そう自分に言い聞かせた。
「あっ」
私は不思議な光景を目にした。
「うぅ〜〜〜ん〜〜〜」
1人の小さな女の子が自販機の前に蹲りながら僅かに開いた隙間に手を伸ばしていた。
恐らくは中学生くらいだろう、白い半袖のYシャツとショートパンツ、赤と黄の二―ソックスとコインローファー、雪の様に白い肌と鬼灯色の瞳、長くて黒く艶のある腰まである両耳の上で結んだツインテール……
ここまではとても可愛い女の子なのだけど、前髪に飾ってあるドラゴンの頭を模した髪飾りが違和感だった。
「取れないよ〜」
多分お金でも落としたんだろう、
やがて右手を引っこ抜くとため息を零した。
「仕方ないか」
女の子は今度は信じられない事に両手を下に入れて自分より大きな自動販売機を持ち上げてしまった。
(異星人居た―――っ!)
と私は心の中で叫んだ。
折角気持ちを切り替えたばかりだってのに、
「あ、あったあった」
案の定自販機の下に落ちていた500円玉を左手で拾うと自販機を元の位置に戻した。
「ん?」
「あ」
私と女の子が目が合った。
呆気に取られていた私にさっきの行動を見られたと察したんだろう、次第に女の子の口の形が変わっていった。
「い、いやああっ! ロン〜〜っ!」
女の子が叫ぶとそれに反応するかのように髪飾りが輝いた。
「きゃあっ?」
私は思わず目を瞑った。
再び目を開けると女の子の姿は無かった。
「な、何だったの?」
私の体には何の変化も無い、とは言え何かされたのは事実だった。
後で兄貴に尋ねるか? でも兄貴は仕事中だし、それに里中先生は苦手だし……
「何でこんな目に会わなきゃいけないのよ……」
憂鬱な気分をさらに悪化させながら学校にやって来た。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki