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 シドは相変わらず攻撃一方だった。
『どいつもこいつも皆殺しだぁ!』
「待ちやがれ!」
 オレはシドと対峙する。
『フン、いい度胸ですね、観念して殺されに出てきましたか』
 口調は丁寧だが完全に狂気に染まっちまっている。
 だがオレは口の端を上に上げながら言ってやる。
「生憎だな、オレは二度と死なねぇって決めてるんでな!」
 オレは首から外し、左手に握られているギルを前に突きだした。
「頼むぜ、相棒っ!」
 するとギルは眩い光を放った。
 光はオレの全身を包み込み、額部分に親指くらいの大きさの青い水晶と黒いゴーグルが取り付けられた青いヘルメット、楕円を描く青い肩繋がった左胸にセイヴァ―・エージェントの紋章が入った胸当と白い腹部の胴体、二の腕は白く肘からは青い籠手、中央に逆三角形の水晶が取り付けられ左右に黒い3本ラインの入った青い腰当、白い腿部分と膝から下は青いパワード・スーツへと具現化した。
『何っ?』
 シドは目を丸くした。
 サイモン以外(オレを含んだ)全員驚いてる、本当に規格外な奴だ。
「オレ様の自信作、セイヴァー・ギアって名付けようか…… 時間が無くてタクミ1つ分しか用意できなかったが、思いっきりやってやれ!」
「よっしゃ!」
 オレはセイヴァー・アームズをシドに向ける。
 シドはやがて落ち着きを取り戻すとオレに向かって吐き捨てた。
『フン、たかがそんな付け焼刃のパワード・スーツで…… 私に勝てると思っているのかっ!」』
 シドの口からエネルギー砲が発射される。
 オレは両足を揃えて天井スレスレまでジャンプするとシド目がけて右足を付きだした。
「らあっ!」
『クッ!』
 シドはオレのキックを回避し、右手の剣を振りかざす。
 オレはセイヴァー・アームズで受け止めるとそれを払って身を翻し、奴の背中に即刀蹴りを食らわせた。
『ガッ!』
 シドは衝撃でよろける。
 オレはその隙に攻撃しようとするがシドの首が180度回転すると目から光線がハナたれた。
「うわっ?」
 オレの手からセイヴァ―・アームズがはじき飛ばされ、遥か後ろまで飛ばされた。
『キエエェ―――っ!』
 するとシドが両手持ちした剣をオレの頭から振り下ろした。
 だがオレはそれを真剣白刃取りで受け止めると、その刃を膝でへし折った。
 バキン! と言う音を立てて奴の剣は使い物にならなくなった。
「オラアアアッ!」
 オレは折れた刀身を放り投げると奴の顔面を殴り飛ばした。
『グアアッ!』
 奴が怯んだ。
 さらに左足で蹴り上げ、そのまま遠心力を付けた右足で回し蹴り、そして間合いを詰めて奴のどてっ腹に右の肘を撃ち付けた。
『ガアアアアッ!』
 シドは横転する。
 圧倒的な攻撃力だった。
「はぁ…… はぁ……」
 だけど早く決着つけなきゃな。
 オレも体力の限界だ。
『クッ…… 何故だ。何故そこまでして戦う?』
「はぁ?」
 オレは眉間に皺を寄せて聞き返した。
『地球のような小さな星など、消えて無くなろうが宇宙には何の影響も無い、何故そこまでして守ろうとするッ?』
 どこぞの特撮の悪役が言いそうなセリフだな、まぁ実際地球を滅ぼそうとしてんだから似たようなもんだが……
 だがそんな物はオレの中じゃ決まった答えだった。これもどこぞのフィクションみたいな決まり文句だけどな。
「正直地球なんざどうでもいいよ…… だがな、あの惑星にはオレの大事な人間がいる、それだけの事だ!」
 オレは舞を思い出した。
 あいつにとっちゃオレがいなかった2年間は凄く辛かったはずだ。
 再会してからもツンデレでムッツリしてる事の方が多いが、それでもクラスメイトと喋ったり、オレのスキンシップ(セクハラと言われた)に呆れたりとあいつの生き方は変わった。
 だけどあいつは再び笑う事が出来た。それは他の地球人…… いや、宇宙に生きている連中全てに言える事だった。
 一度死んだオレだからこそ分かる、それが生きてると言う意味、生きていると言う証しだった。
 オレがそれを言うとシドは腹を抱えながら立ち上がった。
『馬鹿な…… たかがそんな事の為に……』
「テメェ等にはそんな事でも、オレにとっては舞が全てだ!」
 オレは言い切った。
 あいつがここにいれば『この変態っ!』とか『バカ兄貴っ!』とか言うだろう、だけどそれで構わない!
「シスコンめが」
「シスコンだね」
「シスコンだな」
 遠くの方でバイスが呆れて鼻で吐き捨て、ファーランが微笑し、サイモンなんかゲラゲラ笑ってやがる。
 何とでも言いやがれ、オレは宇宙最強のシスコンだ!