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「何だと? そんなバカな!」
 シドの声が裏返る。
「一体どうなって?」
「ハッ、決まってんだろ!」
 不思議がってるシドにサイモンが風穴の空いた腹を抑えながら余裕に笑っていた。
「オレ様が造った改造人間が、オメガごときの改造人間に負け訳がねぇんだよ」
 そう言いながらサイモンがオレを見る。
 オレの体から金色のオーラが噴き出して鎧のようにまとわりついていた。
「行くぜ、リターン・マッチだ!」
 オレは両手の関節を鳴らした。
 すると少し離れた所で取り乱していたシドが深く息を吐いて落ち着きを取り戻した。
「フン、どんな手品を使ったかは知りませんが、奇跡は二度と起きませんよ…… レンっ!」
 シドが命じるとレンは右拳を震わせながらオレに向かって飛びこんだ。
「うおおおおっ!」
 だがオレは寸の所でそれを左腕で払うと腹部を蹴りあげた。
「ぐはっ!」
 さらに前かがみになったレンにさらに右足で回し蹴りをお見舞いした。
「があああああっ!」
 レンが床に転がると埃が宙に舞った。
 その姿にシドは再び錯乱した。
「な、何故だ? 一体何故?」
「ハッ、本当にオメガの改造手術も大したもんじゃねぇな!」
「何ぃっ?」
 シドはサイモンを睨みつけた。
「タクミにゃちょいとした仕掛けをしておいたんだよ」
 サイモンが言う仕掛け、それは思念能力に使う脳のエネルギー、念波を体に貯めておく事だった。
 これを開放する事で身に纏わせ、一定の時間内だけ身体能力をあげる事が出来る。
 もちろんメリットもある、どんな水を貯めたタンクでも使い続ければやがて空になる、そうなればオレに勝ち目はない。
「ぐっ……」
 レンは歯を食いしばりながら立ち上がる。
「無理しねぇ方が良いんじゃねぇのか? さっきより随分弱くなってるみてぇだけど?」
「貴様こそ、最初から使わなかったと言う事は制限時間があるか、長時間使えないと言う事になる…… ならば勝機はこちらにある」
「そいつはテメェも同じだろ」
「むっ」
 レンは眉を引くつかせた。
 どうやら図星みたいだな。
 こいつは確かにオメガの改造手術で強くなった。だけど1つだけおかしい事があった。 
 それはこいつが超能力を使って無いって所だ。
 こいつが今の状態で超能力使ったなら無敵のはずだ。
 だけどオレは考えた。もしかしたら『使わない』んじゃなくて『使え無い』んじゃないかってな。
 こいつの能力はオレと似てるが違う、オレは場合は念波を体の中に溜めて放出し鎧のように纏うようなモンだが、こいつの場合は強化された念波を直接体に流す事で細胞組織を突然変異させてるはず、つまりその間は他の超能力は使う事は出来ない。
「これはオレの感だが、恐らくそれを使っている間は体や臓器にかかる負担がでかい、長時間使用すると命に関わる!」
「フン、お見通しか!」
 レンは超スピードでオレの目の前に現れて回し蹴りを放った。
 だがオレは屈んで回避、オレは奴の土手っぱらにボディブロウをお見舞いしようとする、だがこれは超スピードで回避された。
 だけどオレはこれを読んでいた。
「りゃああっ!」
 オレは右足に体重を乗せると上半身を折り曲げて右足を後ろに付きだした。
「がはあっ!」
 ワンパターンな野郎だぜ。
 こいつは回避すると必ず後ろにくる。
 レンが怯むとオレは体制をかけ直して奴の顔面を殴り飛ばした。
「ぐはっ!」
 だけど攻撃はまだ続くぜ。
 オレは軽く飛ぶと奴の頭部に回し蹴りを放った。
「ぐうっ!」
 間一髪でレンは攻撃を防御したので大したダメージは無い、だが目がカッと見開くとオレの足を払い、刹那の隙を狙って左手で正拳突きを放った。
 だけどオレは奴の右拳を左手で止めた。
「チィ!」
 レンは余った左手でオレの顔面目がけて攻撃するが、そうは問屋がおろさない、オレは右手で奴の左手を抑えつける。
「お前、もういい加減にしろ! さっきと比べて随分弱くなって来てるじゃねぇか、もう限界なんじゃないのか?」
「それがどうしたっ!」
「何だとぉ?」
 オレは眉を細める。
「例え限界だろうと俺は戦うだけだ! 俺に退く事は許されない!」
 レンの目は真剣だった。
 話す事は無駄だってのは分かってる、だがどうしても聞いてみたい事が1つだけあった。
「恐くないのか?」
「何っ?」
「死ぬのが恐くねぇのかって聞いてんだよ!」
 オレの問いにレンは笑止と言わんばかりに言い返した。
「何を言うかと思えばそんな物…… 家族を失う絶望に比べればそんなの些細な事だ!」
「テメェ……」
「貴様はどうなんだ? 家族がいるなら喪った時に今の様な言葉が言えるのか?」
 レンは逆に訪ねて来た。
「さぁな、オレも舞がいなくなったら地球だろうが宇宙だろうがぶっ壊したくなるだろうな」
「フン、結局貴様も同じか、なら俺の事をどうこう言う筋合いは……」
「だけどな、生憎オレの妹は生きてるんだよ…… そしてこの地球を守って欲しいって願ってんだよ!」
 オレの手に力が入るとレンを押し始めた。
 レンは焦りながら両手に力を入れてオレを押し返す。
「テメェ等何かに、この地球は渡さねぇ!」
 オレは頭を振り上げると渾身のヘッドバットを食らわせた。
「ぐあっ!」
 レンの両手から力が抜けるとオレは顔面を思い切り殴り飛ばした。
「がああっ!」
 レンは鼻血を出しながら数歩よろけて床に膝を付けた。
 オレは人差し指をレンに向ける。 
「全力出して掛って来い、オレは絶対に負けねぇ!」
「き、貴様ぁ……」
 レンは左手で自分の右手首をつかんだ。
「かぁぁあああああっ!」
 レンの体中から血管が浮かび上がり、体中の全エネルギーを一点に集中させてるんだろう、右腕にどす黒いオーラが集まり始ってパンチグローブの様になった。
 オレも腰を低くして右手を構える。
 オレもエネルギーを右手に集めて床を蹴った。
 レンも同時に出ると間合いを詰めて拳を解き放った。
「「うおおおおおおおおおおおっ!」」
 オレ達の拳は互いの拳をすり抜けて顔面に激突、その場に刹那の沈黙が走った。