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 あっという間に全員やられちまった。
 本当に全滅覚悟だった。
 これがゲームならリセット押してレベル上げて再挑戦ってのがあるだろうが、残念だけどこれは現実だ。リセットもコンティニューも無い。
「やっと終わりましたか…… まぁ、楽しませてもらいましたよ」
 シドの野郎はクスクス笑いやがった。こっちは命懸けだってのに……
「アホか…… まだ残ってるだろ……」
 オレは腹を抑えながら立ち上がる。
 すると塩田ちゃんが近付いて来た。
「そんな体じゃ無理よ、貴方だけでも逃げて……」
「いや、逃げたってまた捕まるだけだぜ」
 実際テレポートしたって追いつかれる。
 テレポートは体力使う上に移動する場所が遠ければ遠いほどイメージが必要になる。
「それにやられっぱなしで逃げるってのも癪にさわる」
 オレはセイヴァ―・アームズの切っ先をレンに向けた。
 するとレンは深いため息を零しながら言って来た。
「馬鹿が、これだけ実力差を見せられて勝てると思ってるのか?」
「良く言うぜ、本気でやって無いくせにな」
「何?」
 レンは眉間に皺を寄せた。
 ずっと引っかかってた。
 こいつはオレ達を殺ろうと思えば簡単に殺る事が出来た。
 現実ファーランもバイスもサイモンもまだ生きてる。
「お前ひょっとして、人を殺すのが恐いんじゃないのか?」
「な、何だと? ふざけるな! オレはこれでも何人もの敵を血祭りに上げて……」
「そう言えば殺す相手を選んでるんだったな、どうせテメェの飼い主様と似たり寄ったりの奴なんじゃねぇのか?」
「おやおや、言ってくれますね、死にかけのクセに……」
 シドが会話に入って来る。
 だけどオレは構わずに言う。
「何に対して怯えてるか知らないが、そんなんじゃオレ達は殺せねぇよ」
「貴様ァアアアッ!」
 レンがオレに向かって飛びかかるとオレの顔を殴りつけた。
「があっ!」
 オレは宙を滑りながら壁に激突、今度は壁をぶち抜いて隣の部屋まで飛ばされた。
 レンは素早く移動して床に倒れるオレの胸倉をつかんで持ち上げる。
「怯えてるだと? このオレが? ふざけるのも大概に……」
「ふざけちゃいねぇ!」
 オレは目を見開いた。
 するとレンは怯んだ。
「オレはテレパスは使えねぇ、だからテメェが何考えてるか知らねぇが、テメェの目は明らかに怯えてる目だ!」
「こ、このぉ……」
 レンは怒りに顔を歪め身を震わせる。
「レンっ! 奴の言葉に耳を傾ける必要はありません、貴方は何も考えず戦えば良いのです! 妹を殺された事を忘れたのですか?」
「妹?」
 オレは壁の穴の向こうのシドを見る。
「貴方の恨みや憎しみは小手先の言葉で簡単で揺らぐ様な物なのですか? 全てを憎み、怨む事こそが妹の為なのですよ!」
「それは違うわっ!」
 すると塩田ちゃんがその後ろから叫んだ。
 刹那の間沈黙が走る。
「彼の過去を聞いたわ、だけど所詮憎しみは憎しみを、怨みは怨みしか生まないわ! こんな事を続けて…… 死んだ妹さんが喜ぶと思ってるの?」
「どう言う事だよ?」
 オレは尋ねる。
 するとレンにも妹がいて、その妹が戦争の犠牲になった事を話して来た。
「なるほどな、どうりで……」
 やっと納得できた。
 こいつは無意識の内に分かってたんだ。
「おい」
 オレはレンを呼ぶ。
 するとレンもオレを見る。
「その気持ちは分かるぜ、オレも妹がいるんだからよ…… でもだからって、テメェが怒り任せに暴れてたら、結局そいつらと同じじゃねぇか!」
「何だとっ?」
「テメェの今やってる事は、テメェの妹を殺した連中と同じだって言ってんだ! テメェはそれで満足かなのかっ?」
「だ、黙れ! オレは、オレは……!」
「テメェの妹は戦争で死んだんだろ、どんな経緯だろうとテメェが入った組織は戦争を利用して儲けてんだぞ、そんな組織の為に働いて妹が喜ぶと思ってんのかっ?」
「黙れぇえ―――っ!」
 レンはオレに向かって拳を振るう。
 だがオレは右手を伸ばしてレンの拳を受け止めた。
「何ぃっ?」
 レンが怯む。
 ファーランを殴り飛ばすほどの拳を普通に受け止めたのだから驚くのも無理はない。
「うおおおおおぉぉぉ――――っ!」
 オレは咆える。
 途端オレの体が眩しい閃光に包まれた。
「ぐっ?」
「きゃあっ?」
 レンは顔を顰め、塩田ちゃんも両手で目を塞いだ。
 他の者達もそうだ。光が晴れたその瞬間、レンの体が宙で山を描きながらすっ飛んだ。
「ぐはあっ!」
 レンは数メートル吹き飛ばされて床に落ちた。