SAⅤIOR・AGENT
しかし問題は奴だった。
ファーランより強い上にバイスより早い、マジで強敵だぜ、こりゃ腹くくらなきゃいけないみたいだな。
そう考えていると今度はオレに向かって飛びかかった。
「はっ、早ぇ……」
オレはとっさにテレポートして回避する。
だが背後には既にレンがいた。
「くッ!」
オレはさらにテレポートするが今度はオレの目の前に現れて拳を繰り出した。
これも何とか回避するがまた追いつかれて足刀蹴りが放たれた。
「があああっ!」
オレは吹き飛ばされて壁と激突して床に落ちた。
改造人間じゃ無かったら上半身と下半身がさよならだ。両手に力を入れて立ち上がろうとするが体に力が入らない。
「ぐはっ!」
オレは血を吐いた。
折角治ったばっかだってのに、これじゃ意味がねぇ……
丁度飛ばされた場所が塩田ちゃんの近くだったので、彼女はオレの側に近付いて床に膝を着いた。
「御剣君っ! しっかりして…… あっ?」
塩田ちゃんはオレ達に近付いてくるレンを見て身をビクかせた。
「ここまでだな」
「くっ……」
オレは顔を顰めた。
レンは目を吊り上げて手を強く握り締めて拳を作った。
「捨てた命を拾った事を後悔しろ!」
「待って!」
塩田ちゃんがオレの前に立ちふさがる。
「貴方達の狙いは私の命でしょう? この人達は見逃してあげて!」
「そう言う訳にもいきませんよ」
するとその後ろでシドも言って来る。
『その者達は敵なのです、ましてや余計な損害が結構出てしまったのですから、殺されても仕方のない事ですよ』
「そ、そんなの……」
『レン、その娘ごと殺しなさい』
シドが命じるとレンは拳を塩田ちゃん目掛けて拳を振り上げる。
だがその時、レンの背後から攻撃が放たれた。
無数の光の弾がレンの背中に当たって弾かれた。
「ムっ!」
後ろを見るとそこにはサイモンがいた。
「効かねぇってか……」
サイモンは皮肉交じりに苦笑した。
さっきの攻撃は明らかにα・モードだった。
つまりこいつにα・モードは通用しない、恐らく念波か何かで防いでるんだろう、変身をどうにかしないと転送できない事になる。
『新手ですか?』
「ああ、お前さんを検挙する為のな!」
サイモンはシドに言い返しながら銃口を向けて引き金を引いた。
確かにそれが1番妥当な手段だ。いくら強くてもレンは所詮シドの手下、頭がやられればそれで終わりのはずだ。
だけどそうもいかなかった。レンはシドの前に一瞬で移動して身を呈してサイモンの攻撃を防いだ。
「チッ!」
サイモンは舌打ちをする。
だがその瞬間、あっという間に間合いを詰めるとレンの拳がサイモンの腹を突き破った。
「ガッ……」
サイモンは顔を歪めた。
こいつは攻撃されても血は出ない、その代わりに引き抜かれた箇所から破損して消え始めていた。
「サイモンっ!」
「このぉ―――っ!」
ファーランは両腕の力を開放して肩まで元に戻してレンに突っ込んだ。
バイスもサイモンが戦っている間にその辺の瓦礫から取り出した鉄の板を添え木にし、自分のシャツを引千切って首に巻いて右手を固定すると今まで長かった柄を短くした手斧サイズのセイヴァー・アームズに変形させて飛びこんだ。
バイスとファーランの目にもとまらぬ連続攻撃が炸裂する。
しかしレンはその場から一歩も動かずに2人の攻撃を紙一重で受け流した。
「りゃああああっ!」
ファーランの渾身の一撃が放たれる。
しかしレンは当たる瞬間に回避すると高速で背後に回り、ファーランを足で踏み潰した。
「うあああっ!」
地面を砕いてファーランがめり込んだ。
そこへ飛んで来たバイスに対して右肘を引き、腹部に向かって掌体を解き放った。
「がっ……」
衝撃が体を突き抜け、バイスの目から焦点が消えると左手からセイヴァ―・アームズがすり抜け、バイス自身もその場に崩れ落ちた。
さらにファーランの背中の翼をわしづかみにすると渾身の力を込めて引き抜いた。
「うあああああぁああっ!」
ファーランは激痛に体を仰け反らせて悲鳴を上げた。
夥しい鮮血が吹き出すと糸が切れた人形のように床に倒れて動かなくなった。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki