SAⅤIOR・AGENT
Episode15,戦いの果てに
オレとの戦闘中、レンは変身した。
上半身の衣服とズボンの膝から下が弾け飛ぶとオレと同じ黄色の皮膚がどす黒く変色し、全身の筋肉が肥大化、両肩が突き出るとまるで全身が鎧になったかのような姿になった。
「野郎……」
オレは口から流れる血を拭って立ち上がる。
ファーラン達もオレに並んで奴を見ると顔を顰めた。
「何こいつ! 超キモい!」
「これが奴の正体だろ……」
「いや、違う!」
バイスは鼻筋に皺を寄せながら首を振る。
レンは自分達みたいに生まれつき変身できる異星人じゃない、もし先天的に変身できるタイプだとしたら遺伝子レベルで細胞や体臭を変化出来る。
だがレンの場合は汗の匂いの中にわずかながら人工物の匂いがすると言う。
つまり改造手術でも受けて変身できる能力を身につけたって事になる。
「オレと同じ改造人間かよ……」
と言っても悲しい事にオレには変身能力は無い、でもどうせ変身するならこんな姿にはなりたくない、どうせもっとクリーンな変身が良い。
オレ達がそう思っているとシドが言って来た。
「驚きですか? 我らオメガの技術をもってすればたやすい事ですよ」
だろうな。
こいつらが何しでかそうが驚きゃしねぇが、悪趣味にもほどがあるぜ。
すると突然レンが目を見開くと足元がへこみ、物凄い衝撃波が走って来た。
「うおっ?」
オレ達はとっさに身をすくめて足を踏ん張って耐える。
だけど塩田ちゃんはそうはいかなかった。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げながら吹き飛ばされた彼女は床に転がった。
「塩田ちゃん!」
「このおっ!」
ファーランが飛び出すとα・モードのトンファーを突き立てた。
だがレンが右手を突き出すとファーランのトンファーには触れずに拳の方を抑えて動きを止めた。
「なっ?」
これはオレやバイスだけじゃなくてファーラン本人も驚いた。
フルパワーじゃ無いとは言えドラン人の腕力を抑えるなんて普通じゃ信じられなかったからだ。
「フンッ!」
攻撃を封じ、さらにその手を払ったレンは自分の左拳をファーランの腹部に付きたてた。
「かはぁあっ!」
ファーランは口から血を吐きながら吹き飛ばされた。
飛ばされた先にあった古びた機材とぶつかると音を立てて崩れ、瓦礫に埋まった。
「ファーランっ!」
「このっ!」
バイスが超スピードで一瞬の内に背後に回ってセイヴァー・アームズを振り下ろす。
しかしバイスの一撃はあろうことかレンの体をすり抜けた。
「何っ?」
バイスは眼を見開いた。
途端背後にレンがもう1人現れると右足を振り上げた。
寸の所でバイスは目の前にいるレンが残像だと気付き、背後に現れた本物のレンの攻撃を右手でガードする。
しかし相手の蹴りが当たった瞬間バイスの腕の骨が砕け、嫌な音が響くとありえない方向に曲がった。
「がああっ!」
バイスもそのまま吹き飛ばされて地面に転がった。
「バイス!」
オレは叫んだ。
「だ、大丈夫だ……」
そんな顔していなかった。
バイスは痛みに顔を歪ませ、息を荒くしながら右腕を抑えて立ち上がった。
恐らく蹴りの威力は肋骨までイッてるのは間違いない。
一方ファーランも音を立てながら瓦礫の中から出て来た。
こっちはバイスほどじゃないが額や腕が擦り切れて赤い血を流してる、とりあえず動けるぐらいの余力はあるみたいだ。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki