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 地下の戦いはまだ続いていた。
 匠はレン、ファーランはヴァロン、バイスはバドと戦いの火花を散らしていた。
『くたばりやがれ犬っコロがぁ!』
 バドの高速の刃がバイスの頭に振り下ろされる。
「チッ!」
 バイスは顔を顰めながらセイヴァー・アームズで受け流した。
 すでに元の姿に戻っているが、それでもスピードはバドの方が上だった。
 バイスは幼い頃から戦い続けて来た為にその経験から相手の動きをある程度予測できるものの防御か回避が精いっぱいだった。
『ケケッ! ちったぁスピードがマシになったみてぇだが、そんなんじゃオレの攻撃は避けきれねぇぜ!』
 そう言いながらバドはバイスのから離れて間合いを開ける。
 途端信じられない事が起こった。
 何とバドの数がどんどん増えて行き、バイスの周囲を取り囲んだ。
「加速による分身か?」
 バイスは舌打ちをする。
 するとバドの目が見開くと複数のバド達は一斉に襲い掛かった。
「ぐううっ!」
 バイスは眉間に間に皺を寄せる。
 腕や足や脇腹などを切り裂かれて血飛沫が舞って地面に滴り落ちる。
「ぐっ……」
 バイスは思わず片膝を突く。
 バドは真っ赤な血の付着した自分の刃を擦り合わせ、鈍い音を立てながバイスを見下した。
『つまらねぇな、どうせやるならあっちの雌ガキの方が良かったぜ!』
 バドが言っているのはファーランの方だった。
 バイスはバドが殺して来たのは力の無い女や子供が多いのを思い出した。
『ガキを殺るのは楽しいぜ、柔らけぇ肉をちょいと切りつけりゃピーピー泣くんだからよぉ……さらにその顔をぐっちゃぐちゃにすんのは最高にたまらねぇ』
 その言葉は明らかにバイスを挑発していた。
 しかしそれに乗るバイスでは無かった。
「言いたい事はそれで終わりか?」
『ああっ?』
「ようするに貴様は弱い奴しか相手にできない腰ぬけと言う事だろ?」
『こ、腰ぬけだぁ? もう一度言って見やがれ!』
「何度でも言ってやる、貴様はただの腰ぬけだ。相手が弱ければ一方的、そして強ければ逃げ出すような奴だ。だからオメガと言うパトロンを得たんじゃないのか?」
『テ、テメェ! 言わせておけば!』
 バドは残像の分身を作り出してバイスを撹乱する。
 バイスはセイヴァ―・アームズを両手で構えると目を閉じて腰を落とした。
『お望み通りぶち殺してやるよ! オレを侮辱した事を後悔させてやるぜぇーっ!』
 再びバドは一斉にバイスに襲いかかろうとする。
 だがバイスはカッと目を見開くとセイヴァー・アームズを振り上げた。
「β・モードォーっ!」
 渾身の力を込めた一撃が床に炸裂すると建物を大きく揺らしてコンクリートの地面を砕いてバイスとバドを煙に包んだ。
『何だっ? クソっ! 何も見えねぇ?』
 視界を塞がれてバドの動きが怯んだ。
 周囲を見るが煙の責で何も見えない。
 だがその時、目の前に黒い影が浮かんだと思うとバイスが飛びだした。
『何ィィっ?』
「α・モードっ!」
 金色に輝く光の刃で擦れ違い様のバドを切り裂いた。
『がああああっ!』
 バドの切られた箇所が光の粒子となって消えて行く。
 バドは悔しそうにバイスに向かって刃を向ける。
『ち、畜生……オレは……まだ……』
「もう終わりだ。殺めて来た命を償え!」
 決して怒って無い訳では無かった。
 無抵抗な人間の命を快楽の為にだけに命を奪って来たバドに対して今まで抑えて来た感情を一気に爆発させた。
 煮えたぎるマグマの様な怒りを乗せたセイヴァー・アームズを振り上げると唐竹から下を切り裂いた。
『ギャアアアアアアッ!』
 断末魔と供にバドは完全に転送された。