SAⅤIOR・AGENT
「待ちなさいよーっ!」
ファーランはフヨフヨと宙に浮ぶヴィロンを追いかけた。
『フン、子供に捕まる私では無い!』
「だ、誰が子供だぁ!」
バイスと違い頭に血の上りやすいファーランは完全に挑発に飲まれていた。
だがそれでもヴィロンはファーランを警戒して近づこうとしなかった。
「りゃあああっ!」
ファーランの上段回し蹴りが炸裂する。
『おっと!』
しかしヴィロンは宙高く浮かび上がると弧を描きながらマントを翻すと無数の触手がファーランの小さな体に絡みついた。
「あぐっ!」
ファーランは顔を顰める。
さらにヴィロンの体から別の触手が生えるとコンクリートに突き刺さった。
するとそこからファーランに向かって床が黒く変色して行き、まるで底無し沼にはまったかのように沈んで行った。
「このっ! このぉ!」
ファーランは触手をつかんで引きちぎろうとするがゴムの様に伸びる一方で部分開放したファーランのでも不可能だった。
その様子を見ながらヴィロンは嘲笑いながら言って来た。
『ドラン人は初めてだな、本当はあの娘も欲しかったのだが……命令ならば仕方が無い』
「何ですって?」
『私が今まで殺して来た人間達はこの闇の中で眠っている、永遠に腐食もせずに朽ちる事も無い、芸術品としてな!』
「な、何考えてんのよ? コレクションにするなら他にもっと良いのがあるでしょうに……」
ファーランはさらにもがくが体はどんどん沈んで行き、腰くらいまで沈んでいた。
『さぁ恐怖しろ! 怯えろ! 鳴き叫べ! その歪んだ顔が最高の芸術品だ!』
「ふっざけんな―――っ!」
ファーランは鬼灯色の瞳がカッと見開くと大きく息を吸って影に向かってレーザー・ブレスを吐き出した。
途端影が爆発し、ファーランはその反動を利用して脱出に成功した。
『何っ?』
ヴィロンは想定外の事に驚く。
先ほどとヴィロンがやった事と同じように頭上で弧を描きながら体制を整えると床に足を付けると渾身の力を込めて触手を振りまわした。
床に突き刺さった触手が抜けるとヴィロンは物凄い勢いで回転させられ、地面に叩きつけられた。
『がああああっ!』
顔を歪めるヴィロンの触手の力が緩むとファーランはそれを振り払い、セイヴァー・アームズを構えてジャンプした。
「α・モードっ!」
金色に輝く金色のトンファーがヴィロンの腹部に真上から炸裂する。
『ギャアアア――――――ッ!』
バドに続き、ヴィロンもゼルベリオスに転送された。
「残るはアンタよ!」
ファーランはトンファーをシドに向ける。
バイスも横に並んで臨戦態勢を取った。
しかし側近2人を失ったにも関わらず、シドは余裕だった。
仮面でどんな表情をしているかは分からないが少なくとも焦っている様子は無かった。
「やれやれ、あれだけ目をかけていたのにあっさりと負けてしまうとは……所詮はチンピラ程度って事でしょうか」
そう言いながらシドは仮面越しに目線を2人の後ろに向けた。
「そんな事よりよろしいのですか? お仲間が大変ですよ?」
そう言った瞬間だった。
ファーラン達の側まで匠が床に転がって来た。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki