SAⅤIOR・AGENT
「α・モードっ!」
途端私達の後ろから声が聞こえると光の帯が空を裂いてオメガの手下達を消し去った。
『ぎゃあああっ!』
『ぐああああっ!』
手下達は断末魔を上げて消えて行った。
「何者です?」
仮面の男が私と塩田さんの後ろにいる人物を見て尋ねる。
私達も振り向いてその人物を見ると私達は目が飛び出すかと思った。
「別に、ただの学校の保険医よ」
里中先生だった。
手にはセイヴァー・アームズを握られていた。
ただ柄部分は兄貴と同じだけれども先端から出ているのは光のブレードでは無く光の鞭だった。
「千鶴ちゃん……、会議に出てたんじゃ?」
「思ったより早く終わってね……、様子を見に来ただけ、そうしたら偉く苦戦してるみたいだからね」
「面目ねぇ」
兄貴は鼻で笑う。
里中先生は私達に近付いて来た。
「どうするの? 貴方の兵隊は消えちゃったわよ」
『ケッ、オレの事を忘れるなっ!』
バドの姿が一瞬で消えると里中先生の頭上に現れて刃を振りおろした。
「甘い!」
だけど里中先生はそれを読んでいたようで身を翻して回避、さらにそのまま右足を振り上げると動作が攻撃に繋がりバドにハイ・キックお見舞いした。
『グギャアッ!』
バドはゴムボールの様に地面に弾みながら仮面の男の方まで飛ばされる。
『こ、このアマァ!』
バドは里中先生をにらみつける。
「貴方、見た事がある顔ね」
『ミーゼル、こいつはリザム星人のバド・リッパー、20の星で300人以上殺害している快楽殺人者よ』
札付きの悪党だったのね。
多分オメガが殺し屋として雇い入れたんだろう。
じゃあそこにいるレンも?
「さてと、どうするの?」
「どうするとは?」
「このまま私達と戦う? オメガの武器密売班元締め、ジューカ星人、シド・ガーランドっ!」
里中先生は指を差して叫んだ。
やっぱり目の前にいるのはかなりの大物だ。
でもこの状況は相手にとってあまり良くないはず。
さっきの戦いを見れば里中先生の実力は分かる、武器が武器だけに複数相手の戦闘にも慣れてる。
「……ククク」
するとシドは笑いだした。
「何がおかしいのかしら? 私は笑えない冗談を言ったつもりはないんだけど?」
「おかしいですよ、これほど上手く計画が運ぶとはね」
「計画通り?」
里中先生はその言葉の意味が分からず顔を顰める。
私もその言葉の意味が分からなかった。
だけど答えは直ぐに出た。
「きゃああっ?」
何と塩田さんの影がまるで噴水のように噴き出すと塩田さんを飲み込んだ。
やがて影は人間大の球体となると兄貴達の頭上を越えてシドの横に付いて姿を変えた。
赤いゴーグル状の目に頭部が尖った覆面とマントが一体化したような私の身長の半分くらいしかない異星人だった。
「スクイット星人!」
兄貴は叫ぶ。
「御苦労、ヴィロン」
『お褒めに預かり光栄です、ボス』
「じゃあ行きましょうか、私達に時間はありません」
「待ちやがれ!」
兄貴はジャンプするとシドに切りかかった。
だけどシドはマントの中から出した銀色の機械を取りだすと中央の赤いボタンを親指で押した。
途端その場にいた異星人の姿が消えて無くなった。
「瞬間転移装置っ!」
里中先生は舌打ちをした。
オメガの襲撃が終わり、後には静けさだけが残った。
「く、くそっ……」
兄貴の右手のセイヴァ―・アームズから光が消える。
途端兄貴は糸が切れた人形のようにその場に倒れた。
「兄さんっ?」
『タクミ!』
私は兄貴の側によって地面に膝を付ける。
そして背中に両手を当てて思い切り揺さぶった。
「兄さん、兄さんっ!」
私が叫ぶが兄貴は何も答えない。
すると里中先生は兄貴を挟んで私の反対側に膝を下ろした。
「妹さん落ち着いて、場所を変えましょう」
里中先生は兄貴の腕を自分の肩に回して起こすと公園から出て行った。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki