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 年齢は私達と同じくらいだろう、白と言うより蒼白の肌、黒く長い髪を後ろで縛り、首から下は白いシャツの上から緑のベスト、下は蛇側のベルトが撒かれたジーンズ、スニーカーを履いた少年だった。
 兄貴はとっさに私達の前に出てギルを構えた。
「地球人じゃ無いな…… 名前と出身星を名乗れ?」
 兄貴が尋ねる。
 すると男は言って来た。
「答える義理は無い、その女を渡せ」
 男は塩田さんを見る。
 異星人で彼女を知ってると言う事はオメガで間違いは無い。
 答えろと言われてすんなり答えるはずが無いオメガに兄貴は鼻で笑った。
「悪いがそれはできない、彼女を守れって命令が出てんでな、欲しけりゃ力づくできな!」
 兄貴はギルからセイヴァー・アームズを転送する。
「………」
 するとオメガは無言のまま手をかざすと両手手の中に両刃の剣が現れた。
 闘う事が回避できないと思った兄貴は地面を蹴りながら相手に突進した。
「β・モードっ!」
 兄貴の声に反応して赤い光のブレードが現れた。
 オメガは兄貴に向かって走り出すと自分の武器を振り下ろす、兄貴はセイヴァー・アームズで受け止めると火花が飛び散った。
「チッ!」
 兄貴は舌打ちしながら押し払って後ろに跳んで間合いを開ける。
 しかしオメガの方が先に攻撃を仕掛けて来た。
 右足を振り上げてハイ・キックを放つ、しかし兄貴は身体を仰け反らせて紙一重で回避する。
 兄貴はカウンターに相手腹部に即答蹴りを放った。
「ぐっ!」
 攻撃を食らった相手はくの字を描いてよろめいた。
 その一瞬の隙を兄貴は見逃さなかった。
「α・モード!」
 セイヴァー・アームズの光の刃が金色に変わると兄貴は横一線に薙ぎ払う。
「チッ!」
 しかし男が舌打ちをすると男の姿が一瞬の内に消えてしまった。
「何っ?」
 兄貴の攻撃が空振りに終わり、兄貴は周囲を見る。
 しかし男の姿はどこにもない。
 兄貴が顔を顰めている。
 するとその背後に人影が浮かんだ。
「兄さん、後ろ!」
 私は叫んだ。
 背後から現れた男が兄貴に飛び蹴りを放った。
「がっ!」
 兄貴はとっさにガードするが衝撃まで防ぐ事が出来ず、土煙を上げながら地面に転がった。
 とっさに立ちあがる兄貴に男は剣を構えながら再び姿を消した。
「くっ、テレポートか!」
 兄貴は言う。
 男もサイキックを使う異星人って事になる。
 すると男は再び姿を消した。
「このっ!」
 兄貴も負けじと眉を吊り上げながらテレポートを使う。
 途端私と塩田さんの周りで兄貴達がぶつかる音が聞こえ、ブランコやジャングルジムなどが砕けた。
「ど、どうなってるんですか?」
 テレポートどころか超能力の事を知らない塩田さんは状況を理解できずに慌てていた。
「えっと…… 簡単に言うと兄貴もあの人も超能力が使えるの、それでお互い瞬間移動で戦って……」
「うわあっ!」
 私が説明していると兄貴が滑り台にぶつかって地面に落ちた。
 男は兄貴から少し離れた場所に片膝をつきながら息を切らした。
「兄さんっ!」
 私は叫ぶ。
 すると男は兄貴を見ながら言った。
「……中々やる、だが超能力に関しては素人も同然だな」
 そう言えば兄貴は超能力はあまり得意じゃないと言っていた。
 しかもテレポートは大幅に体力を削り、肉体に負荷を与える、使い続ければ命に関わる。
「さてと……」
 男は私達を睨みつけた。
「ひっ……」
 私は両肩をビクつかせた。
 すると塩田さんが私の前に出ると両手を広げて立ちふさがった。
「塩田さん?」
「貴女は下がってて……」
 塩田さんの声は震えていた。
「何考えてんのよ? 狙われてるの貴女なのよ! それなのに……」
「だからって私は逃げませんっ! 私は……、自分の正義を捨ててまで長生きしたいなんて思いません!」
 塩田さんは後ろの私を見ながら言う。
 するとその言葉を聞いたオメガは太い眉を引くつかせて足を止めた。
「正義……?」
 オメガは忌々しそうに顔を歪めると剣を持つ手に力を入れた。
「……そんな物に何の価値がある?」
「えっ?」
「正義なんてこの世で曖昧な物だ、そんな物があるから争いの火種が生まれるんじゃないのか?」
「何言ってやがる」
 兄貴はセイヴァー・アームズを支えに立ち上がる。
「戦争屋が偉そうに説教か? その火種に油を注いで甘い汁啜ってんのは、どこのどちら様だよ?」
 兄貴はオメガを睨みつけた。
「まだ立てるのか?」
「生憎、打たれ強いんでね……、この程度じゃくたばらねぇんだよっ!」
 兄貴は口の端を上げながらセイヴァー・アームズを構える。
 オメガは再び兄貴の方を見る。
「なら今すぐ叩き潰してやる!」
 地面に向かって左手の平を広げると目の前の地面が大きく抉れて宙に浮かんだ。
「はっ!」
 オメガが手を突きだすとその土塊に向かって飛んで行った。
「サイコキネシスかっ!」
 サイコキネシス…… って確か思念で物体を持ちあげるって言う超能力の一種。
 敵はテレポート以外の超能力も使えるみたいだった。
「β・モードっ!」
 兄貴は再び赤い刃に切り替えると飛来して来る土塊を縦一直線に切り裂いた。
 普通なら左右に分かれて兄貴の横を通り過ぎて地面に落ちるはず。だが……
「ぬんっ!」
 男はそれを狙っていたようだった。
 切り裂かれた土塊が兄貴の真横でピタリと止まるとまるで車をスクラップにするような機械の様に兄貴にぶつかった。
 兄貴はとっさにその上に瞬間移動した為に潰されずに済んだ。
 だけど一瞬の内にオメガがテレポートで兄貴の背後に回っていた。
「貰った!」 
 オメガは狙ってたんだろう。
 兄貴の心臓を狙って白銀の刃を突きだした。
「チッ!」
 兄貴はとっさに体を捻ると相手の切っ先を回避、上下逆さま状態になると強引にセイヴァー・アームズを振り上げた。
「くっ!」
 オメガも紙一重で兄貴の斬撃を回避する、だけどその代わりに首から下げていたネックレスの鎖部分を切り裂いた。
「なっ?」
 オメガは顔色を変える。
 地面に着地したオメガは兄貴よりも地面に落ちたネックレスに向かって飛びだした。
「……それは?」
「貴様には関係が無い!」
 オメガは『それ』を上着のポケットに仕舞いながら剣を構える。
「よほど大事なモンらしいな……」
「黙れっ!」
 オメガは感情的になって飛びだす。
 冷静さを失ったオメガは瞬間移動で姿を消した。
 だけど兄貴はそれを読んでいた。
「そこだ!」
 体を捻って左手に渾身の力を入れて正拳突きを放つ。
 同時にオメガが現れて兄貴の攻撃を腹部にモロに食らってくの字になりながら地面に転がった。
「がはあっ!」
「攻撃がワンパターンなんだよ!」
 相手が怯んだ。今がチャンスだ。
「止めだ、α・モードっ!」
「くっ!」
 兄貴は最後の一撃を狙ってオメガに金色の刃を振りおろした。
 勝利あり……、と思われたその瞬間だった。