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 私は塩田さんと話がしたくて水城先輩に生徒会の仕事を休むと断りを入れた。
 最初は委員会の仕事をしてると思い、風紀委員の部室に向かったが、私が来る少し前に今日は休むと言って帰ってしまったらしい。
 慌てて昇降口に向かうと塩田さんが校庭を走っているのを発見、私も靴を履き替えて校門に向かうと兄貴も一緒に歩いていたので付けて来たのだった。
 私は足を進めると兄貴達の間に割って入った。
「いい加減にしなさいよ、兄さんはそんな事をする奴じゃないわ、変な言いがかりをつけないで!」
「いいえ、本当の事です! 貴方は妹だからお兄さんを美化しすぎてるだけでしょう!」
「違う! そんな事無い!」
 絶対にあり得ない事だ。
 だけど兄貴は塩田さんと違う物を持ってる、それだけでも彼女と違う、庇う価値がある。
「兄さんはバカだしスケベだしシスコンだし変態だし、すぐにセクハラして来るし子供扱いする、良い所なんて1つも無い!」
「お前な……」
 兄貴は顔を曇らせた。
 本当の事なんだから言われても仕方ない。
 私はさらに続ける。 
「だけど兄さんだけじゃ無い、私だって不破さんだって三葉さんだって大神さんだって…… いや、この世の中に欠点が無い人間なんかいない!」
 私は今朝言いそびれた事を今はっきりと言う。
 生まれてから罪を犯さない人間なんかいない、完璧なんか無い。
 だけど人には好きな事や譲れない物だってある、だけど好きな事を侮辱されたり否定されたりすれば誰だって怒る。
「あれから考えた。正直まだ迷ってるけど……、私はそれで良いと思ってる、例え欠点だらけでも考えが違っても、みんなが一緒に手を取り合って過ごせるようにしたい、それが私の正義よ!」
 私は思っていた事を言った。
 塩田さんみたいに強く言えないし、ただ言ってるだけになるかもしれない、だけど塩田さんは言っている事が正論でもやってる事は彼女をイジメている連中と同じだ。
「そんなの綺麗事ですね、それにその場しのぎの言葉としか思わない」
 塩田さんは言って来る。
 確かに私の言ってる事は出来たばかりの言葉で自信すらない。
 すると兄貴が私の肩に手を乗せた。
「良く言ったぜ、さすがオレの妹だな」
「えっ?」
 兄貴は塩田さんを見る。
「塩田ちゃん、アンタがどう思おうと自由だ。だけど正義ってのは1つだけじゃ無い、1つの正義に囚われる必要は無いんじゃないのか?」
「………」
 塩田さんは口を紡いでうつむいた。
 彼女は周りを見る余裕が無かった。
 目先の正義を求めるがあまり相手を思うだけの心が無かった。
「ま、それでも自分がやりたいってんなら好きにしな、オレァ止めねぇよ」
 兄貴は手を組んで頭の後ろに回した。
「……そうですね、確かに正義は1つだけじゃないですね、でも貴方はどうなんですか?」
「オレ?」
「そうですよ、確かオメガとか言ってましたけど、その人達を裁いてるじゃないですか」
「別に裁いちゃいねぇよ、ゼルベリオスにデータ化して転送してるだけだ」
「同じじゃないですか、結局は実力行使で………」
「それは…… ん?」
 するとその時、兄貴は急に真面目な顔になった。
「兄さん、どうしたの?」
 私は尋ねる。
 すると兄貴は私達に背を向けた。
「……お前ら、逃げろ」
「えっ?」
「お出ましだ」
 兄貴は身を構える。
 すると公園の入口に1人の男が立ちふさがった。