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 翌日。
 私は学校に行くのが憂鬱だった。
 こんな気分になるのは里中先生からセイヴァー・エージェントの事を説明されたあの日以来だった。
 考えてみればこの数ヶ月で色々な事があった。
 死んだと思っていた兄貴が実は生きてて、その後に里中先生や不破さんや三葉さんや大神さんと知り合った。
 その後異星人がらみの事件を通して様々な人達と知り合った。
 生徒会役員になったし月にも行った。クラスでも普通に会話が出来る人達が増えた。
 だけどから振りする事もあった。それは昨日の塩田さんの件だった。
「……これしかないよね」 
 家に帰ってから色々考えた。
 やっぱり一度話し合おう、分かってくれるかどうかは分からないけど、やっぱり塩田さんは力づく過ぎる。
 そんな事を考えながらバスに揺られていた。
 バスから降りると校門の側で塩田さんが立っていた。
「塩田さん」
「白金さん」
 塩田さんは私を見る。
 どうしよう、今まで考えていた言葉が全て消えてしまった。
 すると塩田さんの方が先に言って来た。
「白金さん、ちょっといいですか?」
 すると塩田さんは左腕を見せた。
 白い手首に巻きついていたのはセイヴァ―・ブレスだった。
「ど、どうしてそれを?」
 私は驚いた。
 セイヴァー・ブレスはセイヴァー・エージェントに信頼された者にしか与えられないはず、私の場合は兄貴の妹って事でお情けも入ってるんだろうけど、塩田さんも認められたって事になる。

 私は塩田さんに連れられて体育館裏にやって来た。
 ここは普段は人が訪れない、お礼参りって事は無いよね?
「話は里中先生から聞きました、貴女も協力者だって……」
「協力者って訳じゃないです。ただ……」
 多分聞いて知ってるとは思う、
 私は兄貴が2年前のスペース・コロニー爆破事件に巻き込まれ、それが縁でセイヴァー・エージェントとなり、私はブレスを貰った事を話した。
「ええ、御剣さんから聞きました」
 塩田さんは目を閉じた。
 すると一間置くと口を開いた。
「ようするにただ見てるだけなんですね」
「えっ?」
「お兄さんが戦っている時に、貴女は何もしていなかったんですか?」
「そんな、私は……」
「昨日里中先生と約束したんです。今日中に課題をこなせば私をセイヴァー・エージェントにしてくれるって」
「セ、セイヴァー・エージェントに? 一体どうやって?」
「それは……、正直分かりません、今日中に私の足りない物を見つけ出せればって」
「足りないもの……」
 何だか分かる気がする、だけどそれが何かと言われると言葉が見つからなかった。
 塩田さんは息を吐いて間を置く私と擦れ違い様に言って来た。
「私は必ずセイヴァー・エージェントになります、それに私が正しかったって証明する事になります」
 塩田さんはそれだけ言うとその場から去って行った。
 私は塩田さんの背中を見ていた。