SAⅤIOR・AGENT
兄貴達は学校は早退した。
私は午後の授業の為に教室に戻った。
今日は体育でマラソンがあるので、体操着に着替えると表に出た。
「大丈夫かなぁ?」
今回の敵は今までの敵とは違う。
今までのは確かに危険人物だったけど、今回のは規模が違う。
戦争を起こして銀河その物を消滅させている、本気でかかって来られたら地球なんてあっという間に木っ端微塵だろう。
勿論兄貴達を信じてない訳じゃない、だけど何だか胸騒ぎがする、ただの感なんだけれども兄貴達を心配せざる終えなかった。
そう考えながら私は靴を履き替えて昇降口を出る。
今回は5組の女子と共同だった。
個人での体操が終わり、今度はペアでの柔軟体操となった。
「白金さん、一緒に組みましょう」
そこにやって来たのはクラス1の体育会系、梅沢さんだった。
「ええ…… あっ?」
私が見た方向には体操着姿の塩田さんがいた。
だけど塩田さんは誰とも組まずに1人きりでいた。
しかも周囲は塩田さんなど空気としか思っていないように柔軟体操を進めていた。
「ごめんなさい、私先約があるから」
「え? う、うん」
私は梅沢さんの誘いを断ると塩田さんの元へと向かった。
「塩田さん」
私は塩田さんに呼び掛ける、
「あら、生徒会の?」
「白金・舞です、私と一緒に組みませんか?」
「ええ、いいですよ」
塩田さんは頷いてくれた。
私達は前屈をした。
私の背中を塩田さんが押す、
「う、うう〜〜ん」
「白金さん、凄く固いんですね」
「は、はい…… スポーツなんてした事無いから…… 痛たた」
体がギシギシ言ってる、
他の女子達は私と比べて結構体が柔らかい子達が多い、私が固いだけかもしれないけど……
2組と合同体育の場合は普段の付き合いと言う事もあり不破さんと組む事が多いのだけれど、不破さんは本当に骨が入ってるのかと思うくらい体が柔らかかった。
ちなみに不破さんから聞いた話だとドラン人の中には骨が無い人もいるらしい。
柔軟体操が終わり、今度はマラソンとなった。
私達はトラックを走り周る、
だがトラックを半周もしない内に私は息を切した。
体育が終わって私は昇降口の所にある水飲み場に座っていた。
隣で顔を洗っていた塩田さんが言ってくる。
「白金さん、大丈夫?」
「ええ…… 塩田さんは?」
「私はいつも動いたりしてるから」
塩田さんは微笑する。
なんでも幼い頃から空手や柔道などをやっていて、舞朝ジョギングなどをしているので何んとも無いと言う。
「そ、そうなんだ」
私は苦笑する。
とてもじゃないけど私にはマネできなかった。よく毎朝良く続けられる物だと思う。
「女だって強くならなきゃダメよ、でないと正義は貫けないわ」
「せ、正義?」
多分今の子供だって滅多に言わないだろう。
そんな言葉を恥ずかしげも無く言える人を久しぶりに見た。
「私、将来地方知事になろうと思うの、この世から犯罪を無くして弱い人達が住みやすい世界を作るのが夢なの」
塩田さんの目は強い光を秘めている、
ちょっと非現実的と言う気もするけど、彼女は結構しっかりした目的を持っている、
この前は言い過ぎる人だと思ったけど随分親しみやすい人だった。
多分根が真面目過ぎる為に周囲が近付きにくいんだろう、少なくとも自分から悪さをするような人じゃ無い事は分かった。
「白金さん、この学校をどう思いますか?」
「えっ? どうって…… 結構良い学校ですよ、学費は安いですし…… 基本的に自由ですから」
「そう、それですよ!」
「ええっ?」
塩田さんは私に向かってビシッと人差し指を立てた。
「確かに学費は安いですし、アルバイト許可なのは良いでしょう…… ですがいくらなんでも風紀に対して無関心です、自由と言う物はあくまでも規律や秩序を守ってこそ初めて存在するものです」
「は、はぁ……」
「ここの学校の学生は校則を何とも思ってません、服装の乱れは風紀の乱れ、全て1から見直す必要があります!」
塩田さんは熱く語った。
私はその塩田さんの熱弁を延々と聞き続けた。
……やっぱりこの人苦手だ。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki