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Episode12,正義の為に


 
 夏休みが明けて数日経った。
「おはようございます」
 私は校門ですれ違う生徒達に挨拶をする。
 新学期になったと言う事で桜星高校では『風紀強化週間』が実施され、生徒会と風紀委員が校門にて一般生徒の登校を迎える事になった。
 休み明けと言う事で肌が黒くなっている人達が結構見られた。
 皆夏休みに海やプールに行ったんだろう、ちなみに私は海にもプールにもいかなかった。
 意外だと思うだろう、兄貴が合宿から帰ってきたら早速遊びの誘いがあった。
 勿論以前の約束通りに月に連れて行ってくれて、チェイニーさんやラヴィアちゃんと再会した。
 それ以外は全てカラオケや水族館や夏祭りなどだった。
 何故なら『舞の水着姿はオレだけの物だ! 餓えた狼の前にさらすなどオレが許さん』と言っていた。
 あのバカ兄貴、餓えた狼はどっちだっ!
 そんな事を考えている時だった。
「そこ、待ちなさい!」
 振り向くとそこでは1人の女子生徒が男子生徒を咎めていた。
 切り揃えた黒い前髪と腰まであるストレートヘア、白い肌に細い眉を吊り上げた私よりほんの少し背の高い女子生徒だった。
 胸の学年章を見ると私と同学年だった。
「髪の色を染めるのは校則違反です、明日までに染め直して来てください!」
 女子生徒が言う。
「チッ」
 すると男子生徒は忌々しそうに舌打ちをしながら校舎の中へ入って行った。
「そこの貴女達っ! アクセサリーの類は禁止です!」
 するとその女子生徒は人差し指を伸ばして歩きだした。
 その先には鞄に…… 多分何かのキャンペーンで貰ったんだろう、キャラクターのキーホルダーをつけていた女子生徒がいた。
「あの人、一体……」
「ああ、風紀委員の塩田さんですよ」
 水城先輩が私の隣で説明して来た。
 彼女は風紀委員で1年5組の塩田・恵さん。
 新学期が始まった早々この学校に転校、真面目で勉強ができ、先生達の信頼も厚いと言うけど、彼女には問題があると言う。
 それは見て分かった、それは真面目過ぎると言う事だった。
「なるほど……」
 私は苦笑した。
 彼女は私の苦手なタイプだった。
「そこの人っ!」
「ひっ?」
 塩田さんは私を指さした。
 そしてズカズカと私に近付いてきた。
「えっ? わ、私っ?」
 と思ったが塩田さんは私の隣を通り過ぎて後ろを歩いていた人を注意した。
「良かった。私じゃないんだ……」
 私はため息を零す。
 しかし次に塩田さんが止めた人達を見て私は心臓が止まるかと思った。
「貴方達、何ですかその格好はっ?」
 何と兄貴達が塩田さんに捕まっていた。
 大神さんは普通だったのだが、兄貴、不破さん、三葉さんは夏休み気分が抜けなかった。
 兄貴はYシャツを肩まで、ズボンを膝までめくり。
 不破さんは秋葉原やコミケやらに行って来たらしく、そこで買ったアニメのキーホルダーやシールやらをカバンに貼りまくり。
 三葉さんにいたってはいつの間に日焼けしたんだろう、黒い肌にアロハシャツにサングラスと言うファンキーな格好だった。多分雑誌かなんかのモデルの人をコピーしたんだろう、
「ん? どこか変か?」
「変とかそういう問題じゃありません! 服装の改造やアクセサリーやシールを張ったり肌を染めたりするのは校則違反です!」
「ええっ? 可愛いのにっ?」
「おいおい、髪を染めちゃいけないとは書いてあるが肌を染めちゃいけないとは書かれてないぜ」
 三葉さんは両手を上げた。
 確かに生徒手帳には書かれてはいないけど……
「肌も髪も体の一部です! それに制服は着て着てください、学校はリゾート地じゃないんですよ!」
「正論だ。学生なら学生らしい恰好を…… ん? 何だ?」
 大神さんは眉を細めた。
 しかし塩田さんは目を吊り上げると自分の何倍もある大神さんの頭から足までを見下ろした。
「失礼します!」
 塩田さんが後ろに回って大神さんの背中に触れる。
「やっぱり…… 何か仕込んでますね」
「はぁ?」
「何を隠してるんですか? まさか如何わしい物ではないでしょうね?」
「えっ? 何々? バイスも校則違反するの?」
「別に如何わしい物では無い、こんなのがあっても校則違反にもならんだろ」
 すると大神さんはここが校庭だと言う事などお構いなしにYシャツを脱ぎ始めた。
 周囲の男子生徒は顔を顰め、女子などは赤くなって顔を塞ぐも指の隙間から見ていた。
「ちょ、大神さ……」
 私も赤くなりながら大神さんに言おうとした。
 しかしそれよりも早くYシャツを脱いだ大神さんの引き締まった上半身には保冷剤をテープで固定していた。
「体の一部でもアクセサリーでも無ければ問題はあるまい?」
「大ありです! 貴方達のは全て没収します!」
「ええ――っ!」
「オレはどうするんだよ?」
「ジャージを貸します、それと没収できる物は没収します、放課後になったら取りに来てください」
「止む終えん」
「うう〜〜」
 不破さんは口を尖らせる。
 不破さんの場合はシールは剥がせないので中身を取り出して鞄ごと渡し、大神さんは保冷剤を取り外して渡した。
 しかし……
「待ってください、それも没収します」
 塩田さんが言う『それ』とはサポーターの事だった。
「あっ、これは……」
 さすがに兄貴達は口ごもった。
 塩田さんの眼光は獲物を狙う獣のように鋭く輝いていた。
 仕方ないな……
「あ、ちょっと良いですか?」
 私は5人の間に割って入った。
「何ですか?」
「ごめんなさい、里中先生から保健委員の人は集まって欲しいって伝言を受けたんです」
「千鶴ちゃんが?」
「何だろ?」
「急いでたみたいだから早くした方が良いですよ」
 私は兄貴に向かって左目を瞑る。
 兄貴なら分かるだろう。
「ああ、そうだった。すっかり忘れてたぜ、千鶴ちゃんがオレ達に用事があったんだ」
「えっ? 任務なんて聞いてないぜ」
「任務?」
「な、何でもない! それより行くぞ!」
「あっ、待ってください!」
「ああ、私が言っておきますから! あははは……」
 私は苦笑しながら兄貴達を連れてその場から離れた。