SAⅤIOR・AGENT
一方ファーランは蛇のように長く大きな体を怪獣にからませて身動きを封じていた。
『グガガアアッ!』
怪獣は必至でもがくがファーランの締め付けはほどけなかった。
『ホラホラ! さっさとギブしなさいよ! ギブギブギブッ!』
ファーランは怪獣に向かって言う、
しかしその時だった。
『ガアアアアッ!』
怪獣が叫ぶと突然光り輝いた。
そして全身から稲光を放って放電し始めた。
『キャアアアッ?』
ファーランが体を仰け反らせると怪獣を縛り付けているファーランの体が緩んだ。
『ぐっ!』
ファーランが地面に倒れると地響きと供に積っていた雪が大量に宙に舞った。
攻守逆転、怪獣は大きな足でファーランを踏みつけた。
『がっ! ぐぅっ!』
痺れて体の自由が利かないのだろう、
ファーランは一方的に怪獣の攻撃をくらい続け顔を顰めた。
「ファーランっ!」
オレは足に力を入れてジャンプ…… いや、ジャンプと言うよりも空を飛んだと言った方が良いかもしれない、
かなりの距離を飛ぶとオレは右手で拳を作った。
「うおりゃああっ!」
そして右拳にありったけの力を乗せると思い切り怪獣の顔を殴り飛ばした。
『ギャアアッ!』
怪獣は殴られた勢いで横転する、
地面に降り立ったオレは自分の右手を見ると鼻で笑った。
「ったく、ありがたいんだか、やりすぎなんだか……」
体を造り直してくれたはいいけどここまでとは思わなかった。
他にも色々な機能を付けてくれたみたいだけど、この時初めてオレがただの地球人じゃないって事を実感した。
『タ、タクミ……』
「無事か?」
『う、うん…… 大丈夫』
ファーランはオレより大きな頭を上げながら言って来た。
「ファーラン、詳しく言ってる暇はないが…… とにかく時間を稼ぐぞ」
オレはサイモンの方を見る、
サイモンは自分とオレ、バイス、ファーランの訓練用セイヴァー・アームズを回収した。
そしてサイモンの体の一部である赤い球体から黄色くて細いコードの様な物が飛びだすとまるで手の様に4つのセイヴァー・アームズの外装を外して中のバッテリーを取りだした。
バッテリーは地球の電池などと違い、黒くて丸いビー玉くらいの大きさだった。
『分かった!』
ファーランは目を吊り上げて全身を起こして臨戦態勢に入る、
勿論怪獣の方も起き上がるとオレ達の方を見た。
『グルルルッ!』
完全に奴は怒りの矛先をオレ達に向けた。
これでいい、森にはまだ仲間達がいるだろうしな、
「行くぞ!」
バイスが号令をかけるとオレとバイスが怪獣めがけて突進した。
『ガアアッ!』
怪獣はオレ達に向かって炎を吐きだした。
しかしオレ達は避けない、
後ろにいたファーランが大きく口を開けてエネルギーを吐きだして火炎を相殺、オレ達は再び敵の懐に入り込んだ。
さっきのジャンプでコツをつかんだオレは足の力を抑えてジャンプ、怪獣のどてっ腹に右足を付き立てた。
『ガアアッ!』
オレの飛び蹴りを食らって怪獣は体をくの字に曲げる、
オレはさらに左足で蹴り飛ばして宙に跳ぶ、それと同時に背後からバイスが飛び出してオレの右肩を蹴って2段ジャンプ、さらに弧を描いて怪獣の頭に踵落としを食らわせた。
さっきからの攻撃で分かった。
この怪獣は頭が弱い、確かにどんな生物でも頭は弱点だ。
いくら再生能力が驚異的でも生物である以上脳で動いている事は変わらない、
『ガアアっ!』
バイスの蹴りをくらって巨体が揺らぐ、
「やったか?」
「いや、まだだ…… グッ!」
「バイスっ!」
バイスは突然片膝をついた。
さっきの爆発のダメージが残ってるんだろう、
そんな体で無理をしたからそのツケが回ったんだ。
言われた通りにオレは怪獣を見る、
『グルルル……』
怪獣は苦しそうに唸っている、
しかし次の瞬間、とんでもない事が起こった。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki