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「思い出した?」

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「わたし、スピカ」

 スピカは公園の入り口前のベンチに座って、隣の子どものお姉ちゃんを待つことにした。
 今食べているアイスクリームは、本当は兄と食べるはずのものだったけれど、ちゃんとその事情を話したら許してくれるだろう。三つ年上の兄は、しっかりしていて、とてもやさしい人だ。

「おれ、えと、あんどりゅー…みんなはあんでぃって呼んでる……」
「アンディー?」

 わんこみたいな名前だとスピカは思った。さっきは天使みたいだと思ったのだけれど、パイナップルアイスを一生懸命食べる姿は、お隣さんのブランに似ているかもしれない。
 スピカは犬が好きだったから、なんとなく嬉しくなった。
 アイスクリームを食べるのに夢中なのか。さっきまでぼろぼろと流れていた涙は止まり、すっかりと乾いている。

「おいしいかな?」
「うんっ」

 満面の笑みでこくこくと頷く様子が本当に美味しそうだったので、スピカも一緒に笑った。あまいあまいバニラアイスが、更に美味しくなった気がする。

「いっぱい、ついているよ」
「うえ?」

 アンディーが食べきれず、口の周りに残してしまったアイスクリームをそのままにしておくのは勿体無い気がして。スピカはアンディーのほっぺをぺろりと舐めた。
 涙がまだ残っていたのか、少しだけ、しょっぱい味がした。
作品名:「思い出した?」 作家名:狂言巡