小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「思い出した?」

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 
「……まいご?」

 いつも遊んでいる近所の公園の入り口に、オトコノコが立っていた。自分より一回り上の大きさなのだが、捨てられたわんこみたいな不安げな顔をして、辺りをきょろきょろと見渡している。
 スピカは普段自ら誰かに声を掛けないような、人見知りの子どもだった。
 しかし、目の前の少年の、あまりにも不安そうな表情が可哀想に見えて、つい声を掛けてしまったのだ。

「……っ、……!」

 少年は、突然掛けられた声に驚いて、大きな瑪瑙に似た瞳を更に大きく丸めた。そして、ふたつ分くらい下にある少女の顔をじっと見つめる。
 睫毛が何度か瞬き、ぼろぼろぼろぼろと、透明な涙のしずくを一気に零した。スピカもさすがに、それにはぎょっとする。

「な、なんでなくの!? どこか、いたい?」
「ちっ、ちが、ちが……ふえ…ひっく……うえぇ」
「…………」

 大きく首を振って否定の意思は見せるものの、涙は止まる気配を見せない。
 スピカには兄と姉が二人ずついるのだが、どちらもあまり泣かないので、誰かの涙を見るのは新鮮だ。自分も泣き虫だとよくからかわれるけれど、ここまでひどく泣いた覚えはことがない。
 ぼろぼろと泣き続ける彼を前に、どうして良いのかわからずに、スピカまで泣きたくなってくる。そんな自分の心境を察したのか、彼が一生懸命涙を拭いながら口を開いた。

「ごっ、ごめ、ごめんね、おれ、あのね、ねえちゃんと……あかねえちゃんが……っ」
「……やっぱり、まいご?」
「そう、みたいなんだ…うう、…ひっく、えぐ、」

 泣いている理由がとりあえずわかって、スピカはほっとした。それから、精一杯の背伸びをして、少年の頭をぽんぽんと撫でて、慰めようとした。
 彼は一度きょとんとして、それから嬉しそうに、ふわりと笑う。
 一瞬、涙の止まった笑顔がすごくきれいだった。
 きらきら髪の毛と澄んだ緑色の瞳。この前読んだ絵本に出てきた、天使みたいだと思った。
作品名:「思い出した?」 作家名:狂言巡