「思い出した?」
「……まいご?」
いつも遊んでいる近所の公園の入り口に、オトコノコが立っていた。自分より一回り上の大きさなのだが、捨てられたわんこみたいな不安げな顔をして、辺りをきょろきょろと見渡している。
スピカは普段自ら誰かに声を掛けないような、人見知りの子どもだった。
しかし、目の前の少年の、あまりにも不安そうな表情が可哀想に見えて、つい声を掛けてしまったのだ。
「……っ、……!」
少年は、突然掛けられた声に驚いて、大きな瑪瑙に似た瞳を更に大きく丸めた。そして、ふたつ分くらい下にある少女の顔をじっと見つめる。
睫毛が何度か瞬き、ぼろぼろぼろぼろと、透明な涙のしずくを一気に零した。スピカもさすがに、それにはぎょっとする。
「な、なんでなくの!? どこか、いたい?」
「ちっ、ちが、ちが……ふえ…ひっく……うえぇ」
「…………」
大きく首を振って否定の意思は見せるものの、涙は止まる気配を見せない。
スピカには兄と姉が二人ずついるのだが、どちらもあまり泣かないので、誰かの涙を見るのは新鮮だ。自分も泣き虫だとよくからかわれるけれど、ここまでひどく泣いた覚えはことがない。
ぼろぼろと泣き続ける彼を前に、どうして良いのかわからずに、スピカまで泣きたくなってくる。そんな自分の心境を察したのか、彼が一生懸命涙を拭いながら口を開いた。
「ごっ、ごめ、ごめんね、おれ、あのね、ねえちゃんと……あかねえちゃんが……っ」
「……やっぱり、まいご?」
「そう、みたいなんだ…うう、…ひっく、えぐ、」
泣いている理由がとりあえずわかって、スピカはほっとした。それから、精一杯の背伸びをして、少年の頭をぽんぽんと撫でて、慰めようとした。
彼は一度きょとんとして、それから嬉しそうに、ふわりと笑う。
一瞬、涙の止まった笑顔がすごくきれいだった。
きらきら髪の毛と澄んだ緑色の瞳。この前読んだ絵本に出てきた、天使みたいだと思った。
いつも遊んでいる近所の公園の入り口に、オトコノコが立っていた。自分より一回り上の大きさなのだが、捨てられたわんこみたいな不安げな顔をして、辺りをきょろきょろと見渡している。
スピカは普段自ら誰かに声を掛けないような、人見知りの子どもだった。
しかし、目の前の少年の、あまりにも不安そうな表情が可哀想に見えて、つい声を掛けてしまったのだ。
「……っ、……!」
少年は、突然掛けられた声に驚いて、大きな瑪瑙に似た瞳を更に大きく丸めた。そして、ふたつ分くらい下にある少女の顔をじっと見つめる。
睫毛が何度か瞬き、ぼろぼろぼろぼろと、透明な涙のしずくを一気に零した。スピカもさすがに、それにはぎょっとする。
「な、なんでなくの!? どこか、いたい?」
「ちっ、ちが、ちが……ふえ…ひっく……うえぇ」
「…………」
大きく首を振って否定の意思は見せるものの、涙は止まる気配を見せない。
スピカには兄と姉が二人ずついるのだが、どちらもあまり泣かないので、誰かの涙を見るのは新鮮だ。自分も泣き虫だとよくからかわれるけれど、ここまでひどく泣いた覚えはことがない。
ぼろぼろと泣き続ける彼を前に、どうして良いのかわからずに、スピカまで泣きたくなってくる。そんな自分の心境を察したのか、彼が一生懸命涙を拭いながら口を開いた。
「ごっ、ごめ、ごめんね、おれ、あのね、ねえちゃんと……あかねえちゃんが……っ」
「……やっぱり、まいご?」
「そう、みたいなんだ…うう、…ひっく、えぐ、」
泣いている理由がとりあえずわかって、スピカはほっとした。それから、精一杯の背伸びをして、少年の頭をぽんぽんと撫でて、慰めようとした。
彼は一度きょとんとして、それから嬉しそうに、ふわりと笑う。
一瞬、涙の止まった笑顔がすごくきれいだった。
きらきら髪の毛と澄んだ緑色の瞳。この前読んだ絵本に出てきた、天使みたいだと思った。