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アイラブ桐生 第4部 49~50

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 もう、すっかり有頂天で、手がつけられません。

 ここに陳列してある、ドガやルノワールなどの印象派の絵画や、
モネの「水蓮」なども見たいのですが、
このはしゃぎようではそれは無理かもしれません。
考えてみればこの少女は、毎日の生活そのものが、
日本の古くからの格式と歴史、
芸事の世界に深く埋没しきっているのです。

 それをまた、
ごく当たり前のこととして暮らしていました。
ふつうならば、天真爛漫に10代の青春を謳歌しているそんな年頃です。
美術品や絵画よりも、いまの「おちょぼ」に必要なのは、
このお日さまが溢れている庭園と、目に染み入るような緑の空間のほうが、
はるかに大切なことかもしれません。
そんな心配をよそに、きわめて無邪気に「おちょぼ」は、
蝶々のような飛び跳ねています。
本当に、ただの、どこにでもいる女の子の
一人になってしまいました。




 汗をたくさんかいたあげく
頬を上気させ、髪も濡らしたままやっと私の所へ戻ってきたのは、
それからずいぶんと時が経ってからのことでした。
開口一番、「せっかく来たのですから、早くドガや、ルノワールの
絵画を見に行きましょう。ねぇ、そのために来たのですから」
と急かしはじめます。
まったく、この子は、とにかく悪気のない子です・・・・



 「ここにある、たくさんの印象派の絵画たちは、
 みんな有名な絵で、どれもきわめて素敵だそうです!
 私もモネの”水蓮”が大好きです。
 ねぇ行ましょう、早く。ねぇ早くったらぁ!」