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アイラブ桐生 第4部 49~50

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 豊臣秀吉が、天王山の戦いの前に
戦勝を祈願したという、小倉神社の境内まで、あと少しというところで
「おちょぼ」が突然、何かを見つけて、立ち停まってしまいました。
大きな帽子のつばを思い切り深く傾けて、おちょぼが顔を隠します。
おちょぼが、指をさしたのは、境内へ到着したばかりの
一台の黒塗りのタクシーでした。


 丁度、ひと眼でそれとわかる芸妓さんたちが、
艶やかな着物姿を際だたせながら、一斉に、
タクシーから降りてきました。
帽子をさらに深く、目深にかぶり直した「おちょぼ」が、
くるりと背を向けると、
一瞬のうちに、今来たばかりの道に向かって、
駆けだしまいました。


 必死で走る「おちょぼ」の後を追い、ようやく追いついたのは、
先ほど足を滑らせたばかりの、竹林の中でした。
やっと立ち止まった「おちょぼ」の息は、これ以上は
無いほどに苦しそうでした


 「どうしたんだい、いったい・・・・藪からぼうに」

 「祇園の、おっきいお姉さんがたどした。
 小春姐さんと、同期のお姐さんなどもご一緒でした。
 幸い、こちらは木蔭でしたので、たぶん、
 気がつかへんかったと思います。
 すんまへん。びっくりさせてしもうて」


 知り合いならば挨拶すれば・・・
と言いかけたところで、私もはっと気がつきました。
休日とはいえ格式ある祇園の舞子が、
人目もはばからないミニスカート姿で山歩きです。
ましてや、どこの男ともしれない二人きりでの道中です。


 「そうか、まずいよな。そんな恰好だもの。」