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VS都市伝説

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「前ふり長っげーんだよ! どういうこと?!」
「え、知らない? リカちゃん人形の都市伝説」
 リカちゃん人形の都市伝説とは――子供の頃に捨てた人形が、なぜか今となってもと持ち主の家までじりじり近付いていき、わざわざその様子を逐一報告し、恐怖を煽る。そんな都市伝説である。俺らくらいの年代の奴は知っている人の方が多いだろう都市伝説の代表と言っても過言ではないくらいの都市伝説だ。あ、でも、最後持ち主はどうなるんだっけ?

「で、人形にストーキングされていると?」
「うん、家の前まで来てるっていうから、振り切って逃げきた。コンビに寄ってきたけど、スーパーカップ食べるでしょ?」
 うん。風呂上りだし、ナイスタイミング。じゃなくって! 振り切って逃げてきたとか、そこらの女が出来ることじゃねーよ。なにこのハリウッド映画のヒロイン並みの行動力と精神力。ふつう怖がってガタガタなるだろ、薄汚い人形(想像)に追いかけられたら。
「とりあえず……スーパーカップ食べよう。カップのバニラアイスなら一番だよなーあの値段であの美味しさは」
「やっぱ高いだけはある味のハーゲンダッツには勝てないけどねー」
 ローテーブルのところで二人向かい合って座り、スーパーカップの蓋を開ける。ここまで言ってるけど、ステマじゃないからな。俺はビニール蓋の裏まで舐めるけど。自分の家なんだから許してくれ。
「にしても『みおちゃん』って、なんでお前の名前を騙ってるんだ?」
「その子の名前もみおちゃんだったの」
「なんで人形に自分と同じ名前付けるんだよ!」
「何かあったときの身代わりにしようと思って」
「発想怖ッ! 幼児じゃねぇ!」
 ほら陰陽師みたいにさ、なんて美織は言うけれど、俺は陰陽師みたいに呪われたりそのせいで命の危機にあったりする予定はない。スーパーカップを食べ終わり、俺がドライヤーをかけようと洗面所に行こうとしたとき、再びテクノポップが流れた。ランプが七色のイルミネーションでもって、メールの着信をお知らせしている。
「みおちゃんからか……?」
「うん、踏切を渡ったって」
「もうすぐそこじゃねぇか! アイス食ってる場合じゃない!」
「そうね、片付けなきゃ蟻が出るわ」
「そうじゃなくて!」
 すっくと立ち上がった俺は、とりあえず流し台に空いたカップを置き、振り向いたら美織は驚くほどくつろいでいた。風呂上りにととっておいた缶ビール飲まれとる!!
「なに? なんか文句あんの! 恐ろしい人形にローキック食らわせて逃げてきたか弱いかわゆい女の子に?!」
「か弱いかわゆい女の子はそんなことしねー!!」
 ほんと、こいつ疲れる。
「人形といえど都市伝説の怪物だから。油断は出来ない」
「そりゃそーだがな!」
 またも携帯が鳴る。だんだんメール受信の間隔が短くなってきていることに焦る俺たち。みおちゃん人形は確実に俺の家に近付いてきている……。
「釘バットないの釘バット!」
「ねぇよそんなもん!」
「じゃあ釘とバットは?!」
「あ、ある!」
 高校のとき野球部だったんだよなー。血へど吐くほど練習したけど、結局あれが何かの役に立ってるかっていったら、太ももと肩の筋肉がやばくて女に受けがいいことくらいか。女ってなんだかんだ筋肉に弱いよな。美織はようわからんけど。その美織は興奮した面持ちで両の拳を握り、言った。
「作ろう!」
「作らねーよ」
 
作品名:VS都市伝説 作家名:塩出 快