失恋天使
2. alarm
風呂からあがり、寝巻きに着替えて二階の自分の部屋に行くために階段を登って行く。
最近、優菜と会っていない。
あのマックから二週間たってテスト前だ…
勉強しなきゃ。 そう思って机の前に座り、机の上に置いてあるケータイを見る。
〈 新着メール2件 〉
なんだろう?
「毎日寂しくて辛いから。友達に戻ろう。」
「返信ください。」
優菜からのメール。
俺は何が起きてるかさっぱりわからず、焦って電話をかけた。
空気が冷たい部屋。
俺の耳で発信音が響く。
「もしもし。」
いつもより小さな声。
「優菜? どういうこと?」
声に動揺がそのままでる。でも優菜はあらかじめ決まっていたかのように言葉を続けた。
「いきなりでごめんね。 ちゃんと話そうと思ったんだけどそうしたら孝の事考えて、気持ち揺らぐから。 」
小さな声がケータイから聞こえる。 聞き落とさないように耳にケータイを押し付けた。
「寂しかったの。 ただ。 孝がウチの事考えて部活とか勉強とかの邪魔にならないように連絡避けてた事はわかるよ。 ホント考えてくれてたことは嬉しかった。 でもそれに耐えられなかったみたい。」
俺はテスト終わりのよみうりの事を考えて耐えてた。
それだけで部活もなんでも頑張れたのに。
優菜が寂しかったなんて気づかなかった。
「ごめん。 やっぱ戻るのは無理かな?」
それしか頭になかった。
「ごめん。孝が友達にしか見えなくなちゃった。 嫌いになったわけじゃないし、まだ好きな気持ちはちょっとある。けどやっぱ前に進まないと。」
「ちょっと待ってよ。俺は優菜のこと好きだよ。」
「そんなことわかってるよ! こっちも辛いし… ごめん…」
俺にとって優菜が隣からいなくなることで前に進めなくなるのに…
そう言いたいのに言葉はなぜか縮こまった。
「でも、まだ俺は優菜の事が好きだし、こんな事で終わりたくない。 だからまだ好きになってもいいですか?」
今は彼氏として、彼女が元カノになるとしても、幸せになれるような選択をするべきだと思った。
「わかった。 ごめん勝手に萎えちゃって。 今まで楽しかった。」
本当に終わっちゃう気がして。
「絶対あの時みたいに惚れさせて見せるから」
どうしようもない言葉が出たのに優菜は。
「期待してるから。」
そう言ってくれた。
この言葉にどれほど救われたか。 この言葉を信じていればもう一回一緒になれると思った。
夜を越えて、朝がくるまでケータイと睨めっこしていた。
もちろん寝ることなんてできやしない。
ずっと思い出の中にいた。
まだ今日、学校で普通に話せる気がする。
まだ優菜の顔。手の温もり。 キスした瞬間。その全部を鮮明に思い出せる。
一言言ってくれれば、よかったのに。またひとりで抱え込んで。
初めから優菜の気持ちなんてわかってなかった。
そういって冷え切った部屋から意味のない目覚ましが鳴った。