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有島そうき
有島そうき
novelistID. 37034
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私の好きな人

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「葉子さんって不倫とかしてそうだよね」
 二回目の幹事の打ち合わせ。今日も星野くんは仕事で来ていない。そんな席でいきなり笹島さんがそんな事を言い出した。もう酔っているのかと思ったが、まだ一杯目のグラスも空いてない。なので、こういう人なんだろうという理解で落ち着く。
「本当にしてたらどうするの? その質問、危ないよね」
「確かに。そうだね」
「お前、突然何を言い出すの?」
「いや、なんか葉子さんの顔を見てたらついね。美人なのに隙がないってか、色恋とか興味なさそうだから、どういう恋愛してるのかなっとか」
「別に普通に」
「普通に? 本当?」
 大学時代の同級生を八年間も思い続けてるのは果たして普通?
「返事に困ったね。やっぱり何かあるんだ」
「お前、絡むなよ。ごめんね、葉子さん」
「ううん」
 そう流しながら、ここに星野くんがいなくて良かったって思う。星野くんがいたら、きっと彼は私をかばうために私が恋愛に対してはひどく真っ当だと二人に話すだろう。
 そんなのとてもじゃないけどいたたまれない。それにその事に私が動揺して、二人のうち、どちらかが私の思いに気づいたらひどく困る。
「今は? 付き合ってる人とかいないの?」
「いないよ」
「本当?」
「嘘ついたってしょうがないでしょ」
 そういえば、星野くんにもそんな事を聞かれたなっと思い出す。
 私が一人でいるのは不審だろうか? 誰かと付き合っていた方が彼も安心して私の側にいられたりするのだろうか?
「じゃあ、北村とかは? こいつも今、フリーだよ」
「おいっ、何を言い出すんだよ」
「えっ? 駄目?」
「駄目とかじゃなくて……お前、酔っ払ってるのか?」
 私を一人取り残して、二人で揉め始める。私は一人、いつものように星野くんのことを考え始めた。
 今日も来れなくて悪いなぁって思ってるんだろうなぁっとか、今日の夕飯はどこで食べるのかなぁ、近くにいたら少しでも顔が見れないかなぁっとか。星野くんのこととあらば、私は何時間だって考え続けることが出来る。
 学生時代からすでに八年。ずっと彼の事を考えてて、思ってて、未だに考える材料が尽きないってのは我ながらちょっと気持ち悪いなって思う。八年って言ったらどんな情熱的な恋だって冷めそうな時間だ。それなのに、私はずっとずっと星野くんを同じ温度で思い続けている。
「ごめんね、葉子さん。おかしなやつで」
 北村さんにそう声をかけられて、我に返る。
「ううん。そんな事を言ってもらえるなんて、逆に光栄」
「おっ、北村良かったじゃん」
「だから、お前は黙れって」
 星野くんと私が学生時代に出会わずに、こんな風に友達の結婚式つながりとかで知り合っていたら、私達の間には何か違った関係があっただろうか。例えば、星野くんがもう少し私を異性として意識してくれるとか……。
 星野くんが私を意識してくれて、私のことを可愛いと思ってくれたりとか、私の一挙一動に喜んだり焦ったりしてくれたりとか……そんなの想像するだけで倒れそうだ。
「さ、じゃあ、続けよう」
「うん」
 こんな事ばかり考えてるから、私はずっと星野くんに飽きることがない。きっとこれからもずっと私はこんなんだろう。
 今、星野くんは何をしてるのだろう。声だけでも聞きたい。
作品名:私の好きな人 作家名:有島そうき