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有島そうき
有島そうき
novelistID. 37034
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私の好きな人

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 新郎側の幹事達との顔合わせの日。平日の夜に設定したそれに星野くんは仕事の都合で遅れ、私は一人で新郎側の幹事の人達と会うことになった。
「健とも友だちなんだって?」
 居酒屋の喧騒の中、半個室になった四人席で私は見ず知らずの男性二人と向き合っている。新郎側の幹事は笹島さんと北村さん。お調子者で軽そうなのが笹島さんで、真面目そうで落ち着いてる感じなのが北村さん。さっきから私は何度も頭の中で二人の名前を混ぜこぜにしないようにと繰り返している。
 元々、人の名前と顔を覚えるのは大の不得意だ。
「そうですね。大学のサークルが一緒で」
「そうなんだ。じゃあ、古い友だちなんだね」
「ええ」
「俺達は健の同期なんだ。敬語止めようよ。健の同級生なら俺達と同じ年ぐらいでしょ? ため口でやろう、ため口で」
「ああ、はい」
「じゃなくて」
「うん」
 笹島さんは仕事で営業をやってるってだけあって、全く人見知りしない人みたい。星野くんはちょっと苦手なタイプだなって頭の端で思う。星野くんは賑やかな男性とかノリのいい男性がちょっと苦手だ。星野くん自体、どこかそんな風になりたいと思っているみたいだが、いつもノリに乗り切れず、そういった人の前では自己嫌悪を募らせてる。
 笹島さんはそんなタイプだな。
 私はそうやって少し警戒しておく。星野くんを守る。それが私の第一使命だ。
「会場選びとかは俺達に任せてくれるかな。いくつかあたってみて、候補があるんだ」
 反対に北村さんは落ち着いていて、この人となら星野くんもうまくやれるだろうなって思う。
「あっ、任せられるなら助かる」
「じゃあ、会場の予約はこっちでやるよ。代わりに招待状関連をお願いできると助かるんだけど」
「うん。分かった」
「まあ、細かい事はおいおい。とりあえず、顔合わせ出来たんで乾杯しよう」
 笹島さんの掛け声でグラスを持ち上げ、形ばかりの乾杯をする。私はさっきから遅れてくる星野くんから連絡がはいらないかと携帯ばかり気になっている。
「あともう一人、星野さんだっけ?」
 笹島さんに言われて、心の中を読まれたようでどきりとする。
「うん。もうすぐ来ると思うんだけど……」
「金曜日の夜に残業なんて仕事熱心なんだね」
「最近、忙しいみたいだから……」
「そのうち来るでしょ」
 そうして、星野くん抜きで顔合わせという飲み会が始まり、私達は二次会の形式や企画について話し合った。星野くんからの連絡はその日、最後まで来なかった。
作品名:私の好きな人 作家名:有島そうき