最後の魔法使い 第三章 『18年前』
「…18年前。きっかり18年前のことだ。
『魔法使いの街』は確かに存在していた。いや、表向きはみんなロウアーとして暮らしていたから、そこはロウアーの街だった。ロウア―ノースとイーストの間あたりだ。住民は何十代も前からみんな魔法使いだった。
どうしてロウアーとして暮らしていたかというと、住民は政府を恐れていたんだ。自分たちの存在が政府を脅かしているのを知っていたからね。彼らはロウアーとして暮らして、ロウアーの魔法しか使わなかった。学校で教えるのはもちろんロウア―の魔法だけ。アッパーの魔法は、必要な時や特別な儀式のときに用いられたけど、けっして外には漏れないようにひっそりと行われた。
魔法使いの子供たちはある一定の年齢になると自分たちが魔法使いだということを知らされる―そして、魔法使いであることからくる危険なども。大体13から14歳の間だ。魔法使いたちは自分たちの「歴史書」も作っていた。魔法使いの成り立ちから、呪文なんかをまとめたもので、長老が代々それを受け継いでいたらしい。歴史学者として、ぜひともいつか読んでみたいが…。
とにかく、魔法使いたちは決して魔法使いだと悟られぬようにひっそり暮らしていた。とうぜん、ほかの街ともつながっていたから、それとは知らずに街にやってくるロウアーもいた。魔法使いたちは、よそ者には冷たかった。よく考えればわかることだけどね。新しくやってきた人には、完全に信頼できるとわかるまで、よそよそしく接した。」
作品名:最後の魔法使い 第三章 『18年前』 作家名:らりー