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最後の魔法使い 第三章 『18年前』

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「それほど厳重に生活していたのに、なぜか政府はこの街の存在に気がついた。どうしてか、本当のところはだれも知らない。とにかく、政府は魔法使いを全滅させようと考えた。さっきも説明したけど、政府は魔法使いが必ず政治権を奪いに来るだろうと考えているんだ。それは今も同じことだ。それで、前国王―今の国王の父だ―は街ごと破壊しようと思い付いた。前国王はウェズナー将軍、当時の大佐に、ドラゴンの部隊を連れて、魔法使いを全滅させるように命じた。出世のチャンスだと喜んだウェズナー大佐は、すぐに指定された街を焼きつくした―家も、畑も、何もかも。街がハイまみれになったところで、大佐はヴィル(首都)に戻って、国王に報告した。大佐の働きに満足した前国王は、彼を将軍に格上げした。そして、この攻撃のことを決して国民たちに知られないように、ありとあらゆる資料を燃やしてしまった。
でも、大佐は一つだけ勘違いをしていた。確かに大部分の住民は大佐の攻撃で命を落としていたけれど、それを逃れた魔法使いが4人いたんだ。彼らはこのままロウアーと偽って暮らしていても仕方がないと考えた。魔法使いの間では何度か、政府を倒そうという動きもあったようなんだ。けれど、平和を選び続けてきた。その結果が、焼き討ちなんだから、今度こそは、という思いがあったのだろう。だが残った魔法使いは、政府を倒すには戦力にかけていた―一人は長老だったし、残ったうちの二人は女性だったし、唯一の男性は足にけがをしていた。4人は相談して、国外に出ることを決意した。知っているだろうが、この国を出て戻ってきたものはいない。普通なら出ることすらかなわないんだ―だけど魔法使いだけは国の外に出る方法を知っていた。『歴史書』に書かれていたんだろう。幸い長老はそれを持って逃げることができた。
準備が整ったが、ひとつだけ問題が起きた。4人のうちの女性は、実は、生まれて間もない赤ん坊を連れていたんだ。その赤ん坊は力が強く、何故か、国を出るための『準備』を受け付けない。4人は困り果てた―その方法なしには国を出ることはできないし、長く国内にとどまることも危険だった。話し合いの結果、赤ん坊をおいて行くことにした。赤ん坊を連れていた女性は、ロウア―ウェストに、学生時代の知り合いがいた。その知り合いは彼女が魔法使いだということを知っていたが、二人は仲が良かった。彼女はその知り合いに事情を告げ、赤ん坊を預けて、残りの3人とともに国外へ逃げて行った。こうして魔法使いの街は消えた。魔法使いもいなくなった。一人を除いて…。」