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最後の魔法使い 第三章 『18年前』

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第三章 『18年前』 

 ジュダは立ち上がると、テーブルの隣の棚から古い革表紙の本を取り出した。「これは私の研究の成果だ」とジュダは言った。その本はすっかり日焼けしていて、紙の部分は黄色に染まっていたが、埃はかぶっていなかった。
ふっと思い立ち、アレンは尋ねた。「どうやって歴史を調べるんですか?歴史の本なんか、今まで見たこともないし…。」
アレンが知る限り、この国では「歴史」というものに対して特別な意識を払うことはなかった。子供たちは、教育の場では魔法しか習わないようになっている。アッパーとロウアーの違いや、国のシステムなどは、親から子に伝えるものであって、誰も教科書から習ったりしない。それまでアレンにとって「学者」と言えば、ロウアーの呪文を集めている人だった。アレンにとって「歴史学者」は、『魔法使い』と同じくらい不思議な存在だった。
「簡単ではないことは確かだね。」ジュダが言った。「文献や証拠はあるんだ。それはもうたくさんね。何百年も前から、歴史学者は存在していたから、歴史学者自体は珍しいものではないんだよ。まぁロウアーのうちでは珍しいかもしれないけどね。ただ、問題は、資料の全部を政府が所持しているっていうことなんだよ。昔、私は運よくそのうちの何十冊かを読むことができたんだが、それにアクセスできない学者は、老人に話を聞いたりするだけなんだ…。」
ジュダはそこまで言うと、革表紙の本をぱらぱらとめくって一つのページを開いた。
「研究の仕方はまた今度教えてあげよう。いまはとりあえず『魔法使いの街』について話そうか。」
アレンはうなずいた。ジュダは時折本を読みながら、ゆっくりと話した。