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てっしゅう
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「哀の川」 第三十二話

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杏子は店が終わってから、約束どおりにマスターに電話をした。向こうは24時までやっているだろうから、風呂に入って寝る前にかけた。

「もしもし、マスター?今の時間で構わない?」
「ああ、杏子ちゃんか・・・今客が帰ったところだから、いいタイミングだったね。構わないよ」
「さっきは電話ありがとう。純一が教えたのよね?私の携帯を」
「そうだよ、彼はいい青年だ。君が好きになることが解るよ。伯母だったことが辛かったね・・・彼に聞いたよ、君の事色々と、凄く気にしてたよ。優しいなあ」
「マスター・・・そんなことまで知っているの、純一ったら・・・仕方ないわね。でも今は伯母と甥っ子よ。心配しないで・・・マスターこそ何で電話してくれたの?」
「杏子ちゃんのこと少し気になって・・・おれね、別れた妻のこと、もうなんとも思っていないから。時間かかったけど、忘れることが出来た。歳だよなあ・・・45歳だから」
「お互い様ね。女で42はもう最後だよ・・・結婚も恋愛も、違う?」
「そうは思わないけど、杏子ちゃんは若く見えるし、スタイルいいし、全然いけてるよ、まだ」
「嬉しいね、マスターだけだよ、後純一とそんなこと言ってくれるのは」
「純一君がね、キミとボクが一緒になればいいのに、って話したんだよ。まじめに考えてだよ。言われて、その時は笑って済ませたが、これから先一人ぼっちも寂しいなあ、って思ったら、電話ぐらいしてみようって・・・厚かましいけどかけてしまったんだ。こんなこと言って、気分悪くしたよな?」
「・・・マスター、純一がそんなことを・・・考えてもみなかったけど、マスターさえ良ければ時々電話くれる?私もかけるけど・・・逢うのはしばらくしてからにしたい」
「OK!構わないさ。寂しくなったら電話するよ。杏子ちゃんもそんなときは電話くれよな!遅くてもいいから」

マスターの声は優しく聞こえた。若い頃なんでも相談していた三つ年上のマスター・・・佐伯さん、その名前に自分がなろうとは・・・