「哀の川」 第三十二話
由佳は遅くまで夏季合宿のスケジュールを考えていた。水曜日だったので、はっと気が付いて慌てて帰る支度をして、駅に走っていった。毎週のジャズダンスの日だったからだ。少し遅れて教室へ入った。にこっと講師が笑って、麻子の隣へ行くように目配りした。今日でもう一ヶ月が過ぎようとしていたので、身体が随分と柔らかくなっていた。麻子は初めから完全にフロアーにぴたっと両足が開いたが、由佳はもうすぐそうなりそうな段階だった。
講師が準備運動を終えたみんなに意外な話をした。
「みなさん、ストレッチはケガや無理なく踊るためにするものですが、もう一つ効果があるのですよ。解りますか?麻子さんいかが?」
「ええ、美容効果でしょうか?」
「それもあるわね・・・実は夫婦円満になることなのよ。皆さんの大切な場所の締りが良くなって、ご主人が喜ぶから仲良くなるんですの。本当ですよ、これは大切なことですから今度ご主人に聞いてみて下さい。そうそう、由佳さんは対象外ですね・・・そうでもないかしら、フフフ・・・」
作品名:「哀の川」 第三十二話 作家名:てっしゅう