散々元気出す定食 (グランマ付き)
「お兄ちゃん、あたしゃあ散々人生やってきたからね、わかるんだよ。お兄ちゃんて、一流会社のサラリーマンなんだろ。可哀想にね、毎日、忙しいんだろ」
高見沢はこんなへんちくりんな同情をされて、「おばあちゃん、俺の勤めてるところって、一流企業じゃないよ、二流の会社だよ」とまずは否定した。そして、「ホント、忙しくってね、なんともならないよ」とついついホンネが出てしまった。
「だけど、いいお給料なんだろ、ボーナスもたっぷりあってさ」
「薄給の雀の涙だよ。倍くらいもらっても罰当たらないと思うんだけどね・・・」
こんな会話がしばらく続いて行った。その後に、名物『散々元気出す定食(グランマ付き)』が運ばれてきた。
そのメインディッシュは焼き魚。そして、サイドディッシュとして、にんにく一杯の焼き肉にとろろ芋の小鉢、たけのこの煮付けにきんぴらごぼう、プラス野菜一杯のサラダ。そして赤だし。
「ちょっとこの組み合わせ、支離滅裂だよなあ・・・」
高見沢はおばあちゃんに聞こえないように、そんな独り言を呟いた。しかし、それをおばあちゃんは感じ取ったのか、独り言のように呟いた。
「そのお魚は、お兄ちゃんへの特別サービス、甘鯛だよ。京都では『ぐじ』って言うらしいね」
高見沢はこれがどういう話しの展開なのかわからないが、「ああ、知ってるよ、高級魚だね」と答えた。
作品名:散々元気出す定食 (グランマ付き) 作家名:鮎風 遊