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アイラブ桐生 第4部 47~48

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 一方の源平さんは、
水の温み始めた加茂川へ朝から出かけていきます。
釣りをしながら、春がやってきた土手に寝そべりながら、
ひたすら時間をつぶしています。
今日は私も誘われて、岸辺で並んで釣り竿を出しました。
温かさに誘われて、真黒い背をした小魚たちが足元まで泳いできます。
源平さんは竿を放りだしたまま河原の石に腰をおろして、
のんびりとした顔で遠くの大文字などを眺めながら、
山肌に桜の気配などを探していました。
そう言えばそろそろ、この川べりにも
桜の便りが届く季節です。



 土手の向こうから源平さんを呼ぶ、少女の声が聞こえました。
姿を見せたのは、「おちょぼ」でした。
もう舞妓になったのだから「おちょぼ」はやめてとよく言われていますが、
どうしても顔を見たその瞬間に、私の口から最初に出てくる言葉は、
やっぱり馴染んだままの「おちょぼ」です。



 そう言われてよく見ると、
あどけない幼顔だった少女の『おちょぼ』が、
お化粧もずいぶんと上手になって、ほのぼのとした色香なども
確かに、それとなく漂いはじめていました。
舞妓さんの白い顔を作るお化粧の仕方は、実は独特です。
白粉(おしろい)の下地に鬢付け油を使いますが、
この固い油を均一にのばすにはちょっとしたコツがいります。
これがうまくできていないと、後から塗った白粉が
まだらになってしまいます。
出たての舞妓は、毎日、自分の顔と
格闘をしなければなりません・・・・




 出たての頃の舞妓は、
髪は「われしのぶ」という髪形をしています。
着物の襟の色は赤と決まっていて、紅は、下唇だけにさします。
一年ぐらいたつと、髪形が「おふく」へ変わり、
紅は上唇にもさすようになります。
同じように、着物の襟の色も時間とともに
白っぽいものへ変わります。


 ただしこれらのことに、
明確な決まり事があるわけではありません。
見世出しをして2年以上もそのままというの芸妓もいれば、
あっというまに変わってしまう芸妓さんもいるようです。
一般的には、屋形のおかあさんとお姐さん芸妓が相談をしながら
次にどうするかを決めていきます。



 そういえば最近の「おちょぼ」は、
いつ見ても日本髪のままです。
気がついたら半だらで短めだったの帯は、
いつの間にか舞妓さん本来のだらりの帯の長さにも変わっていました。
いまはお姐さん芸妓の小春さんについてお茶屋さんを回っていますが、
そろそろ『おちょぼ』の春玉も、一本立ちに
なる時期かもしれません。