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打算的になりきれなかった一週間

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二階に俺用の部屋がある。一二畳の広い部屋だった。お手伝いさんが
きちんと手入れしてくれているようで、埃臭さがない。中には
最低限の家具と、あちこち連れて行ってもらったときのおみやげが飾ってある。
「入って」
「……うん。裕美、大丈夫かな……」
「そうだな」
「ちょっと電話してみる」
言って携帯を取り出す。可愛いキャラクターのストラップが揺れた。
「もしもし……あ、裕美? うん、うん、今北海道。あ、中多君もいるよ?」
「代わって」
携帯を貸してもらう。
「翔大」
裕美の声がして、俺はほっとした。そこにある。ちゃんと。俺の高校生活は。
「経営者が死んでさ……高校辞めて家を継げと言われたよ。でも俺、絶対に諦めないから」
裕美がくれた四日間。それは平凡で非凡な高校生活。後になって……
ずうっと後になっても、俺は忘れない。特別な四日間を。
そしてそれは、まだ終わっていない。いや、終わらせない。
「当ったり前でしょ! 翔大は若い癖にいろいろ諦めすぎっ」
鼻息も荒く裕美は言う。おいおい。思わず笑みがこぼれる。
「とりあえず、明日は絶対家から出るなよ。明後日迎えに行く。
そしたら……一週間の続きをしよう」
答えを聞かずに電話を替わる。尾上は受け取ると、少し話をして、
電話を切った。